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2015-06-25 06:26
過去二人しかいない「無投票再選」
杉浦 正章
政治評論家
9月の自民党総裁選では総裁・安倍晋三の無投票再選となりそうである。自民党総裁選の歴史をひもとけば、総裁や副総裁の「裁定」による「無投票新総裁選出」や、現職総裁の前任者の任期満了による「無投票再選」は結構ある。しかし、首相本人の“実力”で無投票再選に持ち込んだ例は、中曽根康弘と小泉純一郎しかない。いずれも選挙圧勝などが原動力となっている。その点安倍は、衆院選、参院選、衆院選と国政選挙を3回圧勝に導いており、「無投票資格」保持者として群を抜いた形だ。自民党総裁選が無投票となるケースは、まず新総裁が総裁や副総裁の裁定で選ばれた場合で、1964年佐藤栄作、74年三木武夫、76年福田赳夫、80年鈴木善幸、87年竹下登、89年宇野宗佑、2000年森喜朗の例がある。再選が無投票で行われたケースは、前任者の任期が満了したことに伴う例が多く、80年鈴木善幸が大平前総裁から引き継いだ残り任期満了、89年に海部俊樹が竹下・宇野の残任期間満了、93年に河野洋平が宮沢喜一の残任期間が満了で行われた。そして本人の“実力型” 無投票再選は、84年に中曽根が二階堂進擁立劇を振り切って無投票。86年にやはり中曽根が死んだふり解散のダブル選挙で300議席を獲得した「ご褒美」で1年延長。そして2001年に小泉純一郎が参院選圧勝で無投票再選を果たしている。
要するに実力型無投票再選は、よほど向かうところ敵なしの状況が生じないと実現しないのである。安倍の場合は何と言っても国政選挙の3連勝が圧倒的な力として作用している。議員心理から見て見れば、とかく反乱が起こりやすい参院は来年選挙を控えており、改選組は自分の選挙が大事だから、何としてでも安倍に選挙応援に来てもらいたい。衆院議員も、場合によっては来年衆参ダブル選挙がある可能性があり、油断は出来ない。安倍はダブル選に言及していないが、やるともやらないとも言わないことが不気味なのだ。衆院議員は昨年末の度肝を抜く解散総選挙で、安倍の解散へのハードルが低いと見ており、下手に総裁選で逆らって、刺客でも立てられたらたまらない。
加えて、何と言ってもアベノミクスの成功が圧倒的に作用している。6月24日の株式市場も日経平均株価の終値は、2万868円3銭となり、終値として平成8年12月以来、およそ18年半ぶりの高値。今回はバブルではなく、紛れもなく実態経済が反映された株高である。4月の有効求人倍率は前月比0.02ポイント上昇の1.17倍と、1992年3月(1.19倍)以来23年1カ月ぶりの高い水準。雇用の先行指標となる新規求人倍率は0.05ポイント上昇の1.77倍。4月の完全失業率は3.3%と前月に比べ0.1ポイント低下。1997年4月以来、18年ぶりの低水準となっている。経済評論家の経済見通しがことごとく外れ、とりわけテレビで口汚くアベノミクスをののしっていた女性経済評論家・浜矩子は顔色なしであろう。
景気が悪いと、国会議員は選挙区から突き上げられ、これが大きく政局に反映してくるのが常だが、いまは景気から来る不満はかってなく低い状況であろう。問題は、安保法制の処理で支持率がどの程度下がるかだが、国会対策でよほどのへまをしない限り30%を割ることはまずあるまい。朝日などの聞き方に意図が感じられる世論調査では割ることがあっても、読売、産経などでは割らないと見る。十分国民に説得を尽くしたうえでの採決なら、下がっても一過性であろう。景気さえ維持されていれば、年末にかけて40%から50%に戻る可能性が高い。そもそも30%というのは普通の政権の支持率であり、安倍の支持率の高さは韓国や中国、北朝鮮などの周辺国の「反日」が支えてくれているという逆説的な見方も成り立つ。こうして党内はこわもての総務会長・二階俊博が4月と23日の2回にわたって再選支持を表明するに至っている。ノーバッジにもかかわらず古賀誠がけしかけた1、2年生の反安倍と見られる会合も、回を重ねるごとに人数が減少、湿った線香花火のように消えたり、点いたりとなっている。
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