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2015-01-27 06:51
冒頭から激動安保国会の様相
杉浦 正章
政治評論家
岡田克也がぎょろ目から火を噴きそうに怒っている。代表になってから左傾化が著しい岡田にとって、「安倍談話」を巡る安倍のポジション表明はもってこいの攻撃対象となるのだ。ここで怒らなければ怒るときがないとばかりに怒って見せている。今国会は後半が「安保法制国会」と位置づけられてきたが、どうやらイスラム国の人質問題とも絡んで冒頭から安保問題で激論が展開される様相を呈している。首相・安倍晋三の施政方針演説は来月12日の平成27年度予算案提出後に行われるが、1月25日のNHKで安倍は、集団的自衛権を巡る安保法制と戦後70年の安倍談話で強気の方針を表明しており、事実上の施政方針と位置づけられる。野党が手ぐすねを引く絶好の材料をもたらしている。
安倍発言はおそらく通常国会を通じての立ち位置を明示したものであろう。まず中国と韓国がかたずをのんで見守っている「安倍談話」については、「安倍政権として歴代の談話を全体として受け継いでいく」と述べた。戦後50年の村山談話、同60年の小泉談話の目指す方向は変えない方針を明らかにした。しかし問題は安倍が「70年を迎えるにあたって、今まで重ねてきた文言を使うかどうかではなく、安倍政権としてどう考えているのかという観点から談話を出したい。『今まで使った言葉を使わなかった』、あるいは『新しい言葉が入った』というこまごまとした議論にならないよう、70年の談話は70年の談話として新たに出したい」と述べた部分だ。安倍はなんと両談話の核心部分である「植民地支配と侵略への痛烈な反省と心からのお詫び」の金科玉条表現から“離脱”する意図を鮮明にさせたのだ。「こまごまとした議論」と言う表現は、挑発的ですらある。
安倍は既に2013年4月には国会で「村山談話をそのまま継承することはしない。適切な時期に21世紀にふさわしい未来志向の談話を出してゆく」と言明している。この発言は中韓両国のみならず、米国でも問題になって、リビジョニスト(修正主義者)というレッテル貼りすら生じた。その後若干の軌道修正をしたが、今回の発言で本心は何ら代わっていないことを意味する。いわば確信犯的な姿勢が露呈されてきたことになる。安倍にしてみれば、社会党政権が作った談話など引き継ぎたくないのが本音だろうが、その社会党の何でも反対路線への先祖返りの気配を示す岡田が、渡りに舟とばかりに噛みついた。「安倍総理の発言には驚いた。キーワードは植民地支配と侵略であるが、はっきりとそういうものは入らないと言ったと受け止めた。植民地支配が『こまごま』などと言う総理大臣の発言は全く見過ごせない。重大な発言でこれは許せない」とまで言い切った。NHKの司会の島田敏男が例によって巧妙に野党を煽ったことも原因だが、それにしても岡田は党内左派をにらんで党論統一に願ってもない材料を獲得したということになる。公明党代表・山口那津男までが「キーワードは意味を持っているので尊重して意味が伝わるものにしなければならない」と安倍をけん制した。一方で中国ではさっそく外務省副報道局長・華春瑩が「日本は歴史問題における過去の態度表明と約束を厳守し、適切に歴史問題に対処してほしい」と注文を付けるに至っている。
さらにイスラム国絡みで安倍は、空爆など国連決議を伴わない有志連合の国々による軍事行動について「軍事的な意味の有志連合に参加する考えはない。今行っている非軍事的分野で、医療、食料支援、難民支援といった貢献を中心とした支援を行っていく」と、まずは軍事行動への参加を否定した。しかし「後方支援は武力行使ではないので、国連決議がある場合、そうでない場合でも、憲法上、可能だと考える」と述べた。山口はこの発言に対しても「国連安保理決議に基づく後方支援が基本」と再びけん制した。たったの2人に落ちぶれた生活の党の小沢一郎までがいつからイスラム国の党首になったかと思える発言をした。小沢は「安倍さんのカイロ発言はイスラム国にとって宣戦布告ともとれる」と、安倍憎しのあまりに、まるでテロリストに理解を示さんばかりの発言をした。
一連の安倍発言はまさに「安倍の本音」が出たことになるが、基本的には当然の方向性を示している。端的に言えば戦後70年にもなって、世代も様変わりした一般国民は今さら戦争責任を問われても不快に感ずるだけだ。もちろん「不戦の誓い」は常にすべきであろうが、日本は政府開発援助にせよ、中韓両国に対する技術支援にせよ、慰安婦問題にせよ、真摯な償いをし続けてきた。「まだ足りない」というなら、「戦後中国共産党が繰り返した侵略と戦争の歴史はどう総括するのか」と言うことになる。反省よりも、平和愛好国に徹して一度も戦争を起こしたことのない戦後70年の歴史こそ評価されるべきであり、安倍談話はその上に立ってさらなる「百年平和」を目指す国家観を打ち立てればよいのだ。社会党政権のお詫びを引きずりすぎても、国民の自信喪失につながるだけだ。
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