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2006-12-25 09:50
防衛庁の省昇格に思う
佐島 直子
専修大学経済学部助教授
2006年12月15日、防衛庁の省移行と国際平和協力活動の本来任務化を内容とする防衛庁設置法の一部改正が、大多数の賛成で成立、2007年1月9日に、「防衛庁」は「防衛省」へ移行する。緊張の高まる北東アジアにあって、様々に役割を拡張する自衛隊は、より主体的で、迅速な組織体への移行をめざしているようにみえる。
この点、防衛庁ホームページは、「防衛庁長官は、防衛庁という組織のトップですが、(防衛庁が内閣府に置かれているため)『国の防衛』の主任の大臣ではありません。このため、内閣府の主任の大臣である内閣総理大臣を通じなければ重要な仕事をできない仕組みになっています。(中略)省にすることにより、安全保障や危機管理の問題に『国の防衛』の主任の大臣として、とりくむことができます」と説明する。
しかし、だからといって、内閣府の防衛庁がこれまで重要な仕事をしてこなかった、というわけではなかろう。ここで言う「重要な仕事」とは、法案や人事、予算要求などで、それらに関し防衛庁が他省と同等な権限を持っていなかったことを意味するにすぎない。とまれ、長く日本社会は、安全保障問題をオブラートで包むように扱ってきた。それ故、防衛庁・自衛隊の役割は矮小化されがちで、その「平和効果」が国民の目に見えにくいものであったことは否めない事実だ。
徳田賢二氏の近著『おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済社会心理学』(ちくま新書)によれば、費用(分母)に対する価値(分子)の感覚(お値ごろ感)が消費者の満足度を高めるという。言うなれば、「防衛費」という負担(分母)に対する「平和の実感」という価値(分子)が、防衛費の「お値ごろ感」ということになる。しかし、防衛庁・自衛隊はその「見えにくさ」故に、「平和の実感」に結びつくことが難しかった。省昇格を契機に、安全保障政策や自衛隊の任務への国民の理解が深まり、防衛費の「お値ごろ感」が高まることを大いに期待したい。
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