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2014-08-18 14:20
国際政治の枠組みの考察の要
湯下 博之
元駐フィリピン大使
中国の台頭が21世紀前半の国際社会の極めて大きな関心事で、東シナ海や南シナ海での中国の動きが具体的な問題を生じているのみならず、国際政治の枠組みの変化といった観点からも注目を集めている。ウクライナをめぐるロシアの動きについても、一つの事件としてではなく、ヨーロッパにおける国際政治のパラダイムの変化といった視点から注目されている。
「アラブの春」と呼ばれて歓迎された中東の変化も、混乱状態が目立ち、シリアその他幾つかの国の状況は、まさに「火薬庫」の恐ろしさを感じさせる。久し振りの長期政権を迎えた日本についても、経済に明るさが戻りつつあることは朗報であるが、安倍政権の積極的平和主義の内容が必ずしも十分明らかでないため、どこに向かうことになるのか、内外に懸念が見られる。
このような諸点を考えると、現在の国際情勢を見るに当たっては、個々の出来事について個別に考えるだけでは不十分で、少なくともその背景にある諸要因や大きな流れにも目を向けることが必要であろう。第二次世界大戦後40年以上にわたった冷戦時代には、米ソを中心とする東西両陣営の対立を基本とする国際政治の枠組みがあった。しかし、冷戦終了後はそのような枠組みがなくなり、短期間の米国一極時代を経て、多極化とか無極化とか言われる時代を迎えたまま、国際関係を一応安定させるような新しい枠組みを作り出せないでいる。
前述した諸状況は、そのような新しい枠組みを指向した動きとも把え得るが、そうとすればそのような動きとその背景要因を分析し、そのような動きがどのような方向に向かい得るか、好ましい方向についてはそれを助長する方策、好ましくない方向についてはそれを変えさせる対策としてどのようなことが考えられるか、そしてどのような安定的な国際的枠組みを指向することが可能か、といったことを真剣に検討する必要があろう。世界中の人々が妥当と考えるような新しい国際的枠組みを指向する意見や議論が有識者の間から起こることを期待したい。
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