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2014-07-15 05:35
海江田が前代未聞のずっこけ質問
杉浦 正章
政治評論家
「民主が政権に対抗する野党としての信頼感を取り戻せるかが焦点だ」と朝日新聞に期待された民主党代表・海江田万里の代表質問であったが、最初からずっこけた。集団的自衛権の行使閣議決定に「国会の事前承認がない」と事実に反する指摘をしたり、イラク戦争の自衛隊による復興支援を「後方支援」と述べるなど、事実誤認の連発。首相・安倍晋三から野党第1党の党首としての適性を指摘されてしまう結果となった。海江田は閉会中審査が2日間では少ないと主張していたが、初歩的な問題でつまずくようでは審査の意味がなくなる。野党はみんなと、維新、次世代の各党が賛成に回り、政権与党自公と合わせれば、関連法案成立に支障がない流れが鮮明となった。集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定を受けて14日に行われた衆院予算委員会は、野党とりわけ民主党にとって満を持しての論戦となるはずだった。筆者は一言も聞きもらさぬよう録画して聞き直したが、海江田の質問の稚拙さにはあきれるばかりであった。
仮にも党首であるから、事務局も協力して、最強の論陣を張らせなければならないところだが、多くの重要問題で事実誤認を頻発させた。まず集団的自衛権の行使に当たっての閣議決定について「国会承認の項目がない」と指摘した。安倍から「閣議決定の最後の部分に原則として国会の承認を求めることを法律に明記すると書いてある」と指摘されて、ぐうの音も出なかった。こともあろうに「歯止め」の最重要ポイントを知らなかったことになる。さらに海江田はイラク戦争で自衛隊が「復興支援」したことを「後方支援」と発言、防衛相・小野寺五典からやんわりとたしなめられた。「近隣諸国への説明がない」と噛みついたが、自分が知らなかっただけ。安倍から「38か国を回ったが全ての国で集団的自衛権の行使を説明、全ての国で支持を受けた」と反論され、二の句が継げなかった。状況判断をめぐっても仰天の判断ミス。海江田は「このままどんどん軍拡を続ければ中国との軍拡競争になる」と指摘したが、これも全くの事実誤認。中国は10年間で軍事費を4倍に増大させたが、日本は縮小してきている。安倍も「中期防で5年間に0.8%ずつ増やすことになったが、5年間増やし続けても2002年の水準でしかない」と反論した。
「抑止力」をめぐっても、安倍から党首としての能力に疑問を呈される始末。海江田は「日独伊3国同盟も米国やソ連が攻め込むことが出来ないという論理だったが、戦争に突き進んだ。安倍首相は抑止力万能主義だ」と噛みついた。安倍は「日米同盟と日独伊同盟を同列に扱うのは間違っている」と指摘した。たしかにファシズムの同盟と民主主義の価値観を共有する日米同盟とを同一視出来るわけがない。安倍は「野党第1党の党首なんですから、私はそれで本当にいいのかなぁと思う。抑止力も認めないのは、さすがに民主党だ」と皮肉を交えて党首としての適性を指摘した。海江田は前日の滋賀県知事選で支援候補が勝ったことと集団的自衛権の行使の関連を突いたが、安倍は「影響していないと言うつもりは毛頭ない」と開き直った。そもそも勝った三日月大造は、徹底した民主隠しで選挙戦を戦ったのであり、海江田が後になって胸を張ることの方がおかしい。続いて質問にたった岡田克也も、湾岸戦争停戦後の機雷掃海の際に「護衛艦を出していた」と全くの事実誤認する始末。安保の論客のはずが馬脚を現す結果となった。
総じて言えば、野党第1党の党首にとっては、閣議決定後最初の政府追及の場面であるわけだが、理論武装も、追及能力もお粗末すぎた。要するに、ろくろく研究もせずに、何も知らないまま代表質問に立つというお粗末さを露呈したのだ。民主党は右派が集団的自衛権の行使に賛成であり、賛否を明確にできないままの代表質問の弱点が露呈した結果となった。一方、他の野党も、統一会派を組んだはずの維新は、橋下徹グループと結いの党の間で早くも亀裂が生じた。維新の松野頼久が相手国からの要請を受けた集団的自衛権の行使を容認したのに対して、結いの柿沢未途は反対の立場を明らかにした。国政の最重要ポイントで食い違っては、先が思いやられるところだ。野党は民主党左派、共産党、社民党、生活の党が反対。みんな、民主党右派、維新、次世代の各党が賛成に回る方向となった。今後関連法案の内容をめぐってこの構図が変化しうるが、総じて圧倒的多数の支持が固まる方向となった。
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