1997年の東アジア通貨危機では、タイ、インドネシア、韓国の3国が、国際通貨基金(IMF)から緊急融資を受け、それはIMF以外からも資金提供を受けるいわゆるIMFパッケージの形となった。3国ではIMFから国内の財政改革・引締め政策・制度改革の断行を迫られて経済が落ち込む一方で、マレーシアはIMFには頼らず、財政出動により経済危機を乗り切ったのであった。それから10年をむかえた2007年、『アジア経済政策レビュー』(Asian Economic Policy Review)で関連特集号が組まれ、京都、東京、シンガポールで関連国際セミナーが開催され、それを基にした論文集『アジア金融危機からの教訓』(R. Carney 編 Lessons From the Asian Financial Crisis)が2009年に出版された。10年を経ると、米ドル釘付け政策、ダブル・ミスマッチ(ドルで短期連続的に借りて、現地通貨で長期で投資する)に根本的な問題があった一方で、変動相場制移行後の通貨・金融危機においては、流動性不足(illiquidity)への迅速で大胆な対処が必要であったことも明瞭になっていた。10年の間に、チェンマイ・イニシアティブ(外貨スワップ協定)が整えられ、アジア債券市場イニシアティブも進行し、東アジアでの政策担当者の協力関係が育まれてきた。(2007年5月23日付本欄「アジア開発銀行とアジア債券市場」参照)