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2014-04-23 06:49
アーミテージ“変節”はテレ朝の曲解と誤報
杉浦 正章
政治評論家
徒然草第百九段に「木登りの名人と呼ばれている男が、弟子を高い木に登らせて小枝を切り落としていた。弟子が危ない場所にいる時には何も言わず、軒先まで降りてきた時に、『怪我をしないように気をつけて降りて来い』と声をかけた」との教訓話がある。知日派の元米国務副長官リチャード・アーミテージの幹事長・石破茂に対する発言はまさにこれだ。集団的自衛権の容認は着地に気をつけて実現させて欲しいということだ。テレビ朝日の報道ステーションが鬼の首でも取ったかのようにアーミテージの「変節」を報道しているが、誤報に等しい曲解である。その証拠にオバマは読売との単独インタビューで集団的自衛権の行使容認に向けた安倍内閣の取り組みを全面支持どころか絶賛する考えを表明している。
馬鹿な民放テレビは無視したいところだが、視聴率断トツの番組であり、影響力が大きいからあえて反論する。一瞬同テレビを見ていて、オバマ来日を直前にして、何事が起きたかと感じた人も多かったのではないか。キャスター古舘伊知郎が「集団的自衛権容認のアーミテージが変わった」を連発して、その「変わった」を軸に報道番組が構成されていたからである。内容はまずアーミテージが「集団的自衛権の憲法解釈変更は急がなくてよい。まず経済を優先すべきだ」と発言したと報道。これに追い打ちをかけるように幹事長・石破茂の側近なる者が「アメリカは何が何でも日米防衛協力の指針(ガイドライン)を年内に改訂しようとは思っていない。それを理由に議論を急いで周辺諸国との緊張を生むことの方が望ましくないと考えている」と発言したことを紹介している。加えて名前も聞いたことのない米研究機関の研究員らの「尖閣で紛争が起きても、大統領はウクライナでプーチンに対応したのと同じぐらいの行動しかしない」と言った発言を次々に紹介。まるで米国が集団的自衛権容認不支持に回ったかのような報道を展開した。
古舘はワシントン特派員の新堀仁子を呼び出して同調を求めたが、さすがに新堀は違った。「変わったように見えるが、基本的には変わっていないのではないか。アーミテージは安全保障の専門家だから解釈変更大歓迎、大賛成だ」と正反対の見方を示した。この結果、番組の構成がにわかにぐらついたが、報道の基調は他の報道機関の取り扱いをみれば明らかに大誤報だ。代表例としてNHKの報道を見れば、アーミテージは「日米同盟の強化のために集団的自衛権の行使容認は必要だ」と述べ、支持する考えを伝えている。そのうえで、アーミテージは「安倍政権は、いわゆるアベノミクスなど経済政策の成功による高い支持率に支えられている。強い政権基盤を維持するためにも、まずは経済政策に力を入れ、着実に安全保障の強化を進めてほしい」と述べたというのだ。これが正しい認識だろう。まさに左傾化メディアの「自己都合解釈」が破たんしたことになる。日米首脳会談では報道ステーションとは逆の流れになると見ておいた方がいい。アーミテージは日頃から「アメリカが関与しない限り太平洋は中国の湖になってしまう」と危機感を募らせており、「いかなる領土も日米安保条約の対象になることを中国は認識すべきだ」と中国に警告。2012年のアーミテージ報告では強い絆で結ばれた「対等」な日米同盟の必要性を説き、「集団的自衛権の行使や PKOにおける武器使用条件の緩和、自衛隊海外派遣の促進」などを日本に要望している。そのアーミテージが変節はあり得ない。冒頭述べたように着地に気をつけてと言いたかったのだ。
オバマ政権の対応は読売とのインタビューが鮮明に報じている。オバマは、中国が挑発行為を続ける沖縄県の尖閣諸島について「日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある」と述べ、歴代大統領として初めて安保条約の適用を明言した。集団的自衛権の行使容認について「国際的な安全保障に対するより大きな役割を果たしたいという日本の意欲を、我々は熱烈に歓迎している」と述べ、「安倍首相を称賛する」とまで語っている。日米首脳会談では首相・安倍晋三の集団的自衛権解釈変更への取り組みをオバマは歓迎し、年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)見直しを着実に行うことを確認するのが大きな流れだ。それにつけても石破の側近のブリーフにはバイアスがかかっている。官邸主導型政治への不満が露呈したともとれなくもない。しかし、ここで安倍に反旗を翻したかのように受けとられることのマイナスへの配慮がまったく欠けている。こんな側近が居るようでは石破の将来への展望もおぼつかない。
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