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2014-03-18 05:05
ウクライナ情勢は集団的自衛権容認を加速する
杉浦正章
政治評論家
ウクライナに火が付けば、極東に飛び火する可能性も否定出来ないという状況の中で、世界の国が皆保有して国連憲章の中核となっている集団的自衛権の行使の是非を与党自民党が議論しているのだから、平和な国である。産経抄の言葉を借りれば「能天気」かもしれない。しかし、その「能天気」が3月7日の総務懇談会では力不足で勝負があったようだ。朝日が書いているように「慎重論が噴出」では全くない。「賛成論が噴出」なのだ。その証拠に幹事長・石破茂は、「議論を深め、方向性を出すことは、十分可能という感じを持った」と自信を深めるに至った。語るに落ちたのは、このところ集団的自衛権の憲法解釈変更反対だけで目立ちたがっている村上誠一郎の発言だ。終了後に「みんな解釈改憲に違和感がないのは不思議だ」と宣うた。一部マスコミは意図的に反対論だけを際立たせるが、村上発言の示す実態は、反対派がお手上げのムードであったことを物語る。首相・安倍晋三の指示で今後総裁直属の懇談会で議論を重ねるが、安倍サイドは「夏に内閣改造がある」と“からめ手”から脅しをかけており、小泉郵政のような“抵抗勢力”は生じまい。
しかし、ウクライナ情勢の緊迫は、集団的自衛権の憲法解釈変更に新しい要素を外交・安保両面でもたらしていることは確かだ。反対派は我田引水の議論をし始めているが、勝ち目はないだろう。評論家・寺島実郎はテレビで「アメリカとソ連が軍事衝突になれば、三沢基地を攻撃する場合集団的自衛権の容認はロシアにとって好都合。(解釈変更は)そういうカードを引くということだ」ともっともらしく述べていたが、こればかりは噴飯物だ。もともと日米安保条約はソ連を仮想敵国とした軍事条約であり、ロシアが攻撃するような事態では、解釈改憲があろうとなかろうと同盟国は対象になる。しかし、ロシアがかつてのソ連並みの軍事力を保有するかといえば、とても米国に太刀打ちできる力量にない。おまけに欧州の戦争を極東に拡大して両面作戦を展開する能力などはとてもない。ぎりぎりまでのチキンゲームの展開はあり得ても、プーチンの選択には対日攻撃はない。むしろ警戒しなければならないのは、極東海域への飛び火だ。欧州でロシアが成功すれば、習近平は「極東での力による現状変更が可能」と誤算する可能性があるからだ。
尖閣はもとより沖縄諸島の一部にまで侵攻を開始する可能性がある。現にそのための軍事演習が行われたばかりだ。アメリカが欧州にかかりっきりになってしまった場合の、その空白を突く可能性があるのだ。そうなれば第3次世界大戦の様相となる。場合によっては北朝鮮の金正恩が“ミサイル発作”を起こすかも知れない。ヨーロッパの激突は、世界中に火の粉をばらまく可能性があると警戒するに越したことはない。日本は「憲法9条があるから安全」などという「能天気」な思想はなり立たないのだ。こうしてウクライナ情勢は対岸の火災視出来ないどころか、火災視してはならない状況であるのだ。したがって日米同盟の強化は必然的に重要となる。いったん戦端が開かれれば戦争というのは神学論争ではない。今そこにある敵と戦わなければならないのであって、防衛省幹部が漏らしているように「超法規的行動」があり得るのだ。しかし、日本いおいては、これを許してはならない。いかなる場合にも法規に基づいて文民が統制した軍事行動でなければならない。だからこそ集団的自衛権の解釈変更が急務となってきたのだ。
ただ、諸情勢をかんがみれば性急に事を運ぶ必要は無い。日米が合意している、年末の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)策定に間に合えば十分だ。とりわけ韓国を日米との首脳会談に引き込まなければならない微妙な時期であり、韓国内に警戒論がある問題をあえて急ぐ必要は無い。今後の段取りとしては、オバマの4月22日ころの来日が最大の起動力となる。米国は昨年10月3日の日米安保協議委員会(2+2)の共同発表で集団的自衛権の行使容認賛成を確認している。共同発表は「日本は集団的自衛権の行使を含む法的基盤の再検討を行っており、米国はこれらの取り組みを歓迎し、緊密に連携する」ともろ手を挙げて歓迎の姿勢だ。この方向がオバマの来日で再確認されることは確実視される。日米間の国際公約として確立するわけだ。これを受けて、丁寧に国内議論を進めて、出来るだけ同調者を拡大する必要がある。みんなや維新は既に「落ち」ており、問題は民主党と公明党だが、民主党は保守派を攻略する必要がある。安倍は野田佳彦や前原誠司と会談しても良いのではないか。丁寧に話を通せば、民主党は確実に対応が割れる。反対派を民主党の左派、共産党、社民党などにとどめれば、公明党は泣きながら付いてくる。今国会末か夏頃に閣議決定すれば、秋の法案提出に間に合い、ガイドラインの日程にも影響はない。そのためには、「行使」の対極にある「歯止め」を重視することだ。「歯止め」で納得させられるかどうかで決まると言っても過言ではない。
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