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2014-02-07 06:27
「安倍・石原・渡辺連携」で公明に“圧力”
杉浦 正章
政治評論家
一連の国会審議を通じて集団的自衛権の行使容認に向けての首相・安倍晋三の「工程表」が鮮明となった。そのポイントは(1)今国会中にも集団的自衛権容認に向けて憲法の解釈を変更する閣議決定をする、(2)秋の臨時国会で法的根拠を作る、(3)行使の是非は政策判断で決める、(4)年末の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改定に反映させる、で構成される。同時に安倍は解釈変更に前向きな維新・みんな両党との政策協議を進展させ、場合によっては公明党に先行して変更を合意に持ち込む。そうなれば公明党は態度決定を迫られることになるが、安倍の説得材料は(3)の政策判断での“歯止め”となろう。所信表明演説で打ち出した安倍の「責任野党との協調」路線は、集団的自衛権の行使容認に向けての布石である色彩が濃厚となってきた。みんなの党代表・渡辺喜美は積極的に応ずる構えである。維新は共同代表・橋下徹が市長選にかかりっきりとなることから、いきおい石原慎太郎の比重が増す結果となった。もちろん容認へと向かうだろう。
こうした中で、石原と渡辺の接近がささやかれている。渡辺の父美智雄はかつて石原と自民党青嵐会で活躍した同志であり、石原と喜美の関係もよい。両者は近く集団的自衛権問題で会談することも検討しており、実現すれば集団的自衛権で「安倍・石原・渡辺連携」へと発展する可能性を秘めている。自民党内には幹事長・石破茂が憲法解釈変更の時期に関し、「今国会で結論を出すことが目的ではなく、行使を可能にすることが目的だ」と述べ、今国会中にこだわらない考えを示している。石破は解釈変更に関しては全く安倍と歩調を合わせているが、その段取りについては、秘密保護法成立が官邸主導で進み、マスコミ・野党の攻撃にさらされたことから、慎重姿勢である。安倍は石破に公明党説得を委ねており、石破は(1)集団的自衛権容認、(2)尖閣への偽装漁民上陸など、グレーゾーン事態への自衛隊出動の両面から、舞台裏で公明党説得に取りかかっている。このうちグレーゾーン事態への対応については、公明党も「個別的自衛権の範囲」(幹部)として同調する構えを見せているが、集団的自衛権の行使に関しては、代表・山口那津男が「時期尚早」と立ちはだかっている。
と言っても山口は当初の「断固反対・政権離脱」から「時期尚早」まで折れてきているのだ。最近では「政策的意見の相違だけで連立離脱は到底考えられない」とまで変化し、「知恵を出し合意形成に努力する」と条件闘争的な姿勢を見せ始めている。山口にしてみれば「安倍・石原・渡辺連携」が実現して、これが連立の枠組み変更にまで移行してしまっては、創価学会首脳から責任を問われることになりかねない。実はこれが一番怖いのである。そうかと言って、絶対平和主義の学会婦人部の力も無視できず、実態は学会内で板挟みとなっている状態なのだ。したがって、ここは婦人部説得の“材料”が不可欠なところであろう。婦人部では「地球の裏側にまでアメリカに付いていって戦争することになる」といった議論が主流を占めており、これを説得するには材料が必要なのだ。そこでささやかれているのが、安倍の工程表(3)の「解釈変更を実際に行使するかどうかは政策的に決める」である。
要するに“歯止め”をかけるのだ。安部は国会答弁で「いわゆる集団的自衛権の行使はやらなければいけないということではない。権利として持つことで政策的には選択肢を持つ」と説明している。解釈変更を閣議決定しても、実際に行うかどうかは内閣の判断で決めるのだ。安倍も石破も「地球の裏側論」を否定しており、この辺で山口のメンツを立てる妥協案が出てくる可能性が高い。具体的には例えば、日本海で米艦船が攻撃を受ければ、集団的自衛権を行使して反撃するが、地球の裏側では見送る判断もあり得ることを歯止めとするのだ。この歯止めは(3)の「秋の臨時国会で法的根拠を作る」と密接に絡んでくる。自衛隊の出動要件などを定めた自衛隊法、日本が直接武力攻撃を受けた場合に備える武力攻撃事態等対処法、日本周辺有事での米軍への後方支援を定めた周辺事態法の改正が中心となるが、“歯止め”を入れて公明党やマスコミの反応を和らげることが必要となる。ろくろく理論武装もないままに突っ走った秘密保護法の二の舞は避けたい、というのが石破らの考えであろう。しかし、安倍にしてみれば工程表を動かすには、まず4月の安保法制懇の報告書を受けて早い段階での閣議決定を逃すと、チャンスを失う恐れがある。維新、みんなが盛りあがったところで対応する必要もあるのだ。
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