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2014-01-17 07:02
朴の対中接近阻止は日米共通の課題
杉浦 正章
政治評論家
首相・安倍晋三の靖国参拝は極東の緊張を岩盤化して、これを解きほぐすのは容易でない事態に立ち至った。対米関係については事態沈静化の流れが出てきており、安倍は春に予定される大統領オバマの来日でこれを確定して、日米同盟の再構築を目指すことになろう。ここにきて米国の最大の懸念は、最悪の日韓関係の修復に絞られつつある。北朝鮮の恐怖政治がいつ外に向けて暴発するか分からない中で、日韓のいがみ合いが、米極東戦略の最大の支障となっているからだ。安倍も大統領・朴槿恵も今年は「岩盤溶解」に向けて小異を残して大同につくべき時だ。新年になって安倍の意を受けたものなのであろう、中曽根弘文ら自民党日米議連や外務副大臣・岸信夫による靖国参拝収拾工作がワシントンで活発化した。参拝に「失望」した米国に対する説明行脚だ。この結果、元国務副長官・アーミテージは安倍の参拝について「選挙公約を実行したまでで、もう終わったことだ」と述べ、ことをこれ以上問題化する方向にはないという見通しを明らかにした。もっとも米国サイドでは、日米関係の専門家である「ジャパン・ハンド」からなお反発が上がっている。前米国務次官補キャンベルのように「参拝で、日中間だけでなく、日韓間でも緊張が高まっており、米政府は懸念している」と指摘する空気も依然存在している。元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長マイケル・グリーンに至っては「失望を表明したのは正しい反応だった」と述べている。
米国は完全に納得したわけではなく、知日派外交官らは2度目の参拝のけん制の意味も込めて発言しているのだ。したがって安倍が再度参拝すれば、日米関係は抜き差しならぬ段階に突入すると心得るべきだ。首相周辺には「こちらも失望した」などと軽佻浮薄(けいちょうふはく)な発言をする者がいるが、こういった側近は即刻遠ざけるべきであろう。安倍は参拝による失点の大きさに気付いて、大局を見据えた極東外交に取り組まなければなるまい。その対応は対韓“個別撃破”に尽きる。安倍外交に対する米国の最大の懸念は、中国による同盟の分断に利用されることである。日米同盟と米韓同盟のトライアングルで極東の安全を確保する戦略が成り立たなくなっては、極東戦略にとって壊滅的なダメージとなる。韓国の中国接近にはくさびを打ち込まなければならないのだ。朴の習近平へのすりよりは、中国にとってなによりの対日、対米けん制材料なのであり、習は訪韓を年内に実現させて、より一層の中韓蜜月を演出しようとしている。その構図はまさに「反日同盟」の様相であり、捨てておけば朴は、中韓安保関係の樹立にまでゆきかねない側面がある。
こうした構図の中でオバマが来日することになる。これに先立って米国の極東外交も、足踏み状態から離脱しそうな気配だ。その手始めとして米国務副長官・バーンズが来週、韓国、中国、日本を訪問する。日本にとっては安倍の靖国参拝以来、最初の米政府高官の訪日となる。バーンズは当然日本に対韓自制を求めるだろう。韓国に対しても度を過ごした対中接近をけん制することになろう。米国は何をするか分からない北朝鮮に対する、同盟国の体制再構築が急務と感じているのだ。こうした根回しの上でオバマのアジア諸国歴訪があるのだが、訪日は大統領の極東戦略にとって好むと好まざるとにかかわらず最重要のポイントとなる。靖国参拝を除けば日本の外交安保路線は、米国にとってもっとも好ましい流れを見せている。国家安全保障会議(NSC)を発足させ、秘密保護法を作り、普天間の辺野古移転にメドを付け、今や対米公約となっている集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更は通常国会中に実現する流れだ。安倍はオバマとの会談でこうした状況を説明して、同盟強化を確認することになるだろう。
オバマにしてみれば、日本が突出して対中軍事衝突を巻き起こすことが最大の懸念材料なのであり、日本が中国の海洋進出の防波堤としての役割にとどまる限りにおいては、これ以上にありがたい存在はないのだ。GDP1位の米国と3位の日本が組むと言うことは、考えられる最強の対中同盟であり、日本は米国の「失望」くらいで動揺したり、反発したりする必要は無い。国力衰退の兆候が見られる米国にとって、極東における日本の存在は安保戦略上不可欠であることは言を待たない。集団的自衛権に関しては首相補佐官・礒崎陽輔が通常国会中の閣議決定で踏み切るとの見通し述べている。確かに閉会してからの閣議決定では論議から逃げる印象をもたらす。国民世論の動向もNHKの世論調査で注目すべき傾向が出た。集団的自衛権の行使をできるようにすべきだと「思う」と答えた人は27%、「思わない」と答えた人は21%で行使容認が上回ったのだ。迷わずに「容認」に踏み切るべきであろう。そして年末に予定されている日米防衛協力の指針(ガイドライン)改訂へと結びつけるのだ。これで初めて対中抑止力は完成することになり、中国の軍事挑発は一層困難になる。
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