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2013-12-25 17:52
ガザの洪水被災者を無視するリベラル・ホークのダブルスタンダード
川上 高司
拓殖大学教授
フィリピンは猛烈な台風に見舞われたが世界各国からの迅速な支援が先を争うように届いた。自然災害後の人道支援は各国にとってひとつの外交手段となっているかのようである。アメリカはつねにいち早く海兵隊を送り人道的支援にはぬかりがない。だが、同じように自然災害に見舞われながら国際社会から見向きもされず人道支援も届かない地域がある。イスラム組織ハマスが支配するガザ地区では、経験したことのない大雨の影響で13日洪水が発生し北部が広範囲にわたって水没した。国連の機関はガザ北部を「災害地域」と宣言して国際社会の支援を訴えているが反応は鈍い。
ガザ地区は長年イスラエルによって閉鎖されている。物資の流通は制限され、社会インフラはほとんど機能していない。最近は発電機を動かす燃料が不足し、1日3時間ほどしか電気は供給されない。上下水道も機能不全に陥っている。そんな危険な社会状況の中洪水が起こったのである。医薬品や食糧、飲料水も封鎖されているのでほとんど底をついている。救援物資がガザに届くことはない。凍える寒さの中、家を失い負傷した人々が途方に暮れているのである。
人道的見地からすれば、被災者への支援すら制限されるガザ地区は今まさに人道上の危機といえるはずであり、アメリカのリベラル・ホークたちが声を上げても不思議ではないが、今回は彼女たちは知らんぷりを決め込んでいるようである。どうやらリベラル・ホークにもダブルスタンダードがあるらしい。
国連の担当者は、イスラエルが封鎖を解くように国際社会が圧力をかけるべきだと主張している。水が退くのが遅れれば疾病の蔓延など次の深刻な問題が発生する。封鎖された狭い地区に大勢がひしめくガザで疾病が蔓延したら取り返しがつかない事態に陥る。アメリカはハマスをテロ組織と指定して認めていないので支援には消極的だが、被災したガザの市民たちには関係のない話である。ここでも市民が犠牲を強いられる。折しもネルソン・マンデラ氏が死去した。マンデラ氏ならこのガザの窮状を黙って見ていないに違いない。マンデラ氏を敬愛するならオバマ大統領はマンデラ氏に恥じない行動をとるべきであろう。
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