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2013-08-11 09:14
注目すべき英国のシェールガスの可能性
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
シェール革命といえば、まずは北米であり、北米がその中心であり続けることに変わりはないことは確実だが、最近注目を集めているのが英国である。6月末に、英国の気候変動省(DECC)と英国地質調査所(BGS)は、イングランド北部に約 800~2200兆立法フィートのシェールガス埋蔵量があるとの報告書を発表した。これはあくまで基礎的調査であるが、かなり大規模な埋蔵量である。例えば、ボウランドのシェール層は、米国最大のシェール層を二つ合わせたよりも50%も多い埋蔵量が見込まれ、世界最大であるとのことである。
英国政府は、欧州の中では、シェールガスの開発には積極的である。今年3月には、DECCに、「非在来型ガス石油局」を設置して、シェールガス等の開発に乗り出す方針を示している。さらに、7月には、英財務省は、シェールガス生産から得る収益に課せられる税率を、62%から30%に下げるとの減税措置草案を発表し、シェールガス開発のための投資を促進する意図を明確にしている。北海のガス田が成熟し生産量が減ってきているため、天然ガス輸入量が増加しており、シェールガスに目を向け始めたのであろう。
もちろん、ハードルは高い。まず、シェールガスの採掘に不可欠な水圧破砕法(フラッキング)に伴う環境汚染に対して、強い抵抗があるのは確実である。欧州の大部分でシェール層の開発が事実上禁じられているのも、これが原因である。また、英政府が2010年に固定価格買取制度を導入して大々的に進めている洋上風力発電との兼ね合いもある。これは、2020年までに7000基の風力タービンを設置し、全消費電力の3分の1をそれによって供給するという壮大な計画である。そして、英国のシェール層についての調査が進むにしたがって、6月の報告書が過大評価であったという結果になることもあり得る。
しかし、英国のシェールガスについての高いポテンシャルには、やはり注目すべきであろう。シェールガス開発についての環境面からの見方は、一つはフラッキングに伴う汚染への懸念だが、天然ガスのCO2排出が比較的少ないことから、温室効果ガス削減の観点からの推進論というのはあり得る。もし将来、英国からシェールガスを輸入できることになれば、日本のエネルギー安全保障にとって大きなプラスである。日本が輸入に関心を示すことで、開発促進につながる可能性もある。英国との間で、シェールガスに関して、特に経済連携についての協議の場で、よく意見交換をすべきであろう。
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