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2013-07-16 05:53
参院選半減でも辞めぬつもりの海江田
杉浦 正章
政治評論家
この期に及んで民主党代表・海江田万里が自らのポストにしがみつこうとしている。周辺からは「20割るかどうかがポイント」などと辞任の判断を半減以下に設定する観測気球が上げられ始めている。「海江田さんだけの責任でなく、鳩山、菅、野田さんの責任も大きい」のだそうだ。それほどまでにしがみつきたい座であるかどうかは疑問だが、実際には民主党は党首の首をすげ替える活力さえも失せてしまったような状況である。しかし、改憲をめぐり自民党から分断工作が行われる可能性や、小沢一郎の再編の思惑もからみ、参院選後の混迷は避けられまい。海江田はかつて2月24日の党大会後の記者会見で、参院選に敗れた場合の責任について「代表にしがみつく気は毛頭ない。刀折れ矢尽きたと思った時は潔く代表を辞める」と述べ、辞任する考えを明言した。参院選の勝敗判断についても「1人区で何人とれるかだ」と分析していた。その「刀折れ矢尽きた」状況は、紛れもなく今である。これまで3回の参院選で全国区では19、20、16議席を獲得したが、今回は一ケタ台必至。しかも海江田の指摘した1人区当選の可能性は限りなく0に近い。「刀折れ矢尽きた」どころではない、内堀も外堀も突破され、城は燃えている状態だ。普通なら「殿お覚悟を」と家来が自刃を促す場面である。
しかし、本人は最近「参院選後の進退などの話は一切言わないことにしている。私が潔い人間だなんて余計なことは言わない。危ない、危ない」と、手のひらを返すように、進退に煙幕を張るようになった。昨年就任時に作った「粉骨碎身全此生」という漢詩を再び持ち出して「身を粉にして民主党再生のために自分自身の生をまっとうしようということでございます。もう今の私の心境はこの詩の中につきております」だそうだ。むしろやる気なのだ。党内の動きについても「今はもう離党しようなどという人は誰もいない。よくまとまっている。党内の不穏な動きなんか全然気にならない。前原さんや野田さんとも一緒に街頭演説をやった」と団結ぶりを強調している。殿は「お覚悟」から逃げようとしているのであるが、これが許されるのだろうか。いくら歴代党首の体たらくが凋落(ちょうらく)の原因だからといって、代表が議席半減以下の責任をとらずにすむのだろうか。冒頭述べたように海江田側の布石は20議席を確保出来るかどうかだ。「20を多少割っても辞めない」という説すら出ている。「18議席なら非改選42と合わせて60議席になるから、辞任はパス」なのだそうだ。全く数合わせの逃げ口上だが、これで良しとする雰囲気もある。
海江田側が守り抜けると踏んでいる背景をみれば、第1が衆院選で脳しんとうを起こしたままの状態が継続して、危険極まりない2度目の脳しんとうが起きても、病気の体からは根本治療のエネルギーが湧き出ないところにある。加えて代表に手を挙げる候補が、いまのところ元国土交通相・馬淵澄夫くらいしか見当たらないのだ。「馬渕では、海江田の方がまだいい」と言うムードがある。永田町には、やれ「野田新党」だの、「前原離党」だのといったうわさが絶えないが、まだ海の物とも山の物ともつかない。前原誠司は一時維新共同代表・橋下徹との親密な関係から合流の核となるとみられていた。当初橋下は、改憲派の前原を取り込めば、公明党抜きで参院の3分の2を確保出来、一挙に改憲へのうねりを生じさせられると踏んでいたのだ。ところが、慰安婦発言で馬脚を現して、維新は低迷、6議席がいいところだ。前原も、とても合流できるような状態ではないと判断しているのだろう。
しかし、民主党は前門に虎、後門に狼が立ちふさがっている状態ではある。虎とは首相・安倍晋三だ。安部は、6月19日ポーランドで同行記者団に「3分の2以上の改憲議席を1回の参院選で取るのは不可能だ。日本維新の会やみんなの党だけでなく、民主党の中にも条文によっては賛成する人がいる」と述べている。明らかに改憲で民主党分断を狙う発言だ。一方で、狼は生活代表・小沢一郎だ。地元岩手でも議席喪失必至のていたらくで、毛も抜けて、色つやも衰えた老いた孤狼だが、「選挙後民主党は分裂する」と予言、腹心の参院議員会長・輿石東などを使って、民主党を分断し、あわよくば新党代表を狙っているのだ。しかし、ねじれをフル活用してのし上がってきた輿石は、ねじれ解消で一挙に神通力を失いそうであり、責任論もくすぶり始めている。従って、小沢が思うようには動くまい。こうして選挙後の政局は、海江田の去就をめぐって、様々な思惑が交叉しそうな雰囲気となっている。しかし、るる述べてきたように、党全体が総選挙と参院選の連続アッパーカットをくらって、再起も分裂も出来ないような長患いの体たらくに陥っており、海江田が辞任表明しない限り暫く寝込んだままという状態になるかもしれない。
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