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2013-06-19 05:57
地方選の連敗は参院選に影響しまい
杉浦 正章
政治評論家
地方首長選の自民党連敗が目立つ。目立ちすぎるほどだ。この傾向が参院選挙を直撃するような報道が一部にあるが、本当にそうなるのだろうか。マスコミの大勢は自公で過半数を制して、長年にわたり日本の政治に停滞をもたらした衆参ねじれ現象が終わると読んでいるが、これがひっくり返る可能性があるのか。アベノミクスの神通力は消えたのだろうか。筆者はまず参院選勝利の流れは変わらないと思う。地方首長選と国政選挙は似て非なるものがあるからだ。ただし失言ばかり繰り返す政調会長・高市早苗の“原発死亡者発言”のようなケースが頻発すれば話は別だ。総じて自民は参院圧勝説を背景に守りの選挙のように見える。ここは昨年の総選挙を思い出して、捨て身の攻めの選挙に転じるときだ。たしかに自民党の敗北が続いている。青森市長選、名古屋市長選、さいたま市長選、千葉市長選と主要都市の市長選が連敗。ついに16日には静岡知事選まで3倍以上の大差で大敗北した。小泉進次郞の地盤である横須賀市長選(30日投票)すら危うい状況だ。
連敗の理由について、マスコミはアベノミクスの上滑りとか環太平洋経済連携協定(TPP)参加で農村票が離れたなどもっともらしい分析をしている。まあ少しは影響があるだろうが、根本的な問題は、内閣と政党支持率の高さに自民党の組織が弛緩していることが一番だろう。加えて地方選挙、とりわけ首長選挙は“個人本位”の傾向が強く、政党組織の影響力がもっとも利きにくい性格がある。首長選で新人候補が負けているから、参院選でも1人区25人の自民党新人が危ないと関連付ける見方もあるが、これもおかしい。首長選挙は失政がない限り現職が極めて有利になるケースが多いからだ。その証拠には4月の参院山口補選では、“政党力”が遺憾なく発揮されて、自民党新人が圧勝している。地方選挙で唯一国政選挙と連動しがちなのが都議会選挙だ。小泉純一郎政権が2005年に都議選で負けて衆院選で圧勝したケースをのぞけば、ほぼ勝ち負けが連動している。1989年には宇野宗佑政権が都議選と参院選で連敗、2001年には小泉政権が都議選と参院選で連勝、2009年には麻生太郎政権が都議選と衆院選挙で連敗している。今回の場合は都議選で自民党圧勝が確実視されており、これが参院選に連動する可能性は強いとみられる。
しかし、マスコミや学者の予想が180度外れた例がないわけではない。過去に衆院選で2回、参院選で1回ある。1979年に大平正芳が選挙直前に一般消費税を導入すると言い出し、公示後にぶれて撤回した衆院選では、マスコミが「自民安定多数」と分析したにもかかわらず、過半数割れをしている。1983年のロッキード事件での田中角栄有罪判決後の衆院選挙でも、マスコミの「自民勝利へ」の判断が「過半数割れ」となった。田中だけが同情票で空前の22万票を獲得した。参院選挙で大はずれに外れたのが1998年のケース。橋本龍太郎が恒久減税をめぐって発言が二転三転したこともあり、マスコミの「自民党70議席で圧勝」の予測が44議席にとどまった。橋本は敗北の責任を取って退陣した。この98年のケース以降国政選挙においてマスコミが大きく判断を間違えることはなくなった。マスコミは世論調査の結果に基づいて選挙区ごとに分析して予想値を出すのだが、1998年の大失敗の反省から、分析方法を改良している。これが予測の成功につながっている。加えて今回の参院選挙は民主党への逆風が収まらない上に、維新共同代表・橋下徹の慰安婦発言による維新の壊滅的な大失速などが加わり、よほどのことがない限りマスコミの「自公で過半数」の分析に変化はないと予想される。
閣僚や党役員の大失言が発生したり、アベノミクスに水を差すほどの株価大暴落がない限り、投票先の世論調査で40%を越える支持を得ている自民党が優勢を維持する可能性が大きいのだ。総じて安倍政権は失言や不祥事が少ない傾向があるが、このところ1人で自民党票を減らしているのが高市だ。日本の植民地支配を謝罪した「村山談話」に対する違和感を表明したかと思うと、原発事故でのタブーを破った。「悲惨な爆発事故を起こした東京電力福島第一原発を含め、それによって死亡者が出ている状況ではない」と発言したのは、選挙対策上余りにもお粗末だ。恐らく野党と原発反対派のマスコミは鬼の首を取ったように追及するだろう。党執行部は高市の“閉門蟄居(ちっきょ)”を命じないと危うい。早くも19日付朝日川柳では<見直しは死者が出てからいたします>と皮肉られている。
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