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2013-05-07 10:26
北方領土問題の解決は「極めて不透明だ」とロシア紙報道!
飯島 一孝
ジャーナリスト
安倍晋三首相は4月29日、クレムリンでプーチン大統領と会談し、10年ぶりに日露共同声明を発表したが、肝心の北方領土問題に関しては“仕切り直し”以上の成果がなかった。このためロシアの有力紙は「領土問題解決の先行きは極めて不透明だ」と指摘している。今回の安倍首相訪露に関するロシア側の報道は、日本側の大々的な報道に比べ、極めてクールな扱いにとどまっている。日本の首相が財界人120人を同行して“鳴り物入り”でロシアを訪問した割には、具体的な成果が少なかったからだろう。
4月29日付けロシアの高級経済紙『コメルサント』(電子版)は、日露首脳会談を「平和条約の加速を指示」との見出しで報道した。「楽観的な評価にもかかわらず、領土問題解決の展望はこれまで同様、極めて不透明だ」と明記し、その理由として共同声明の中に「北方領土問題」の記載がないことを指摘している。政府系の『ロシースカヤ・ガゼータ』紙は「日本の首相がプーチン大統領にスキーをプレゼント」の見出しで贈り物の交換を大きく扱っている。安倍首相はソチ冬季五輪の成功を祈り、日本製のスキーウエアとスキー板を贈り、大統領は昼食会で年代物の1855年製ワインでもてなした。プーチン大統領は「このワインは非常に象徴的な贈り物だ。なぜなら1855年は日露通好条約(下田条約ともいう)が調印された年だからだ」と解説したという。
大統領は、この条約こそ日本側が返還を要求している北方四島を日本領と定めた条約であることを知っていて、このワインを振舞ったのだろうか。日本側はその事実を十分認識していただけに、「大統領はどういう意図でそのワインを振舞ったのか」と戸惑ったようだ。確かに4月29日発表の共同声明には、首脳・外相の相互訪問から外務・防衛閣僚の定期協議、官民による日露投資プラットホーム設置など、協力推進のための仕掛けが多数列記されているが、具体的な取り決めは少ない。とりあえず仕組みを“てんこ盛り”にした感は否めない。
とりわけ領土問題で、解決の方向性や工程などが共同声明に盛り込まれなかったのは残念だ。声明では「これまでに採択されたすべての諸文書と諸合意に基づいて進める」としか明記されておらず、両国の外務省に事実上、丸投げしたといっても過言ではない。これでは今後も大きな前進は望めそうもない。プーチン大統領は「引き分け」解決を主張していたはずだが、今回は具体的な提案はなかった。日本政府としては、今後は“プーチン頼み”ではなく、自ら具体的な解決案を提案するなど、積極的に打って出なくてはいけない。まさにこれから安倍首相の指導力が問われることになろう。
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