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2013-02-27 07:01
補正成立はねじれ解消への突破口だ
杉浦 正章
政治評論家
月面着陸のアームストロング流に言えば「離党の1票は小さな1票だが、日本の政治にとっては大きな飛躍だ」といったところだ。参院選挙を待たずにねじれ解消現象が発生して、補正予算案が成立してしまった。民主党の離党が止まらなくなった結果だ。自民党幹事長・石破茂が「今日を境に歴史が変わっていく」と述べたとおり、ねじれの本格解消への突破口になるだろう。日銀総裁人事や来年度予算審議にも好影響をもたらすことは確実だ。いまこそ「決められない政治」を第二院が形作ってきた歴史にとどめを刺す時だ。自民党は、表向き「おごることなく慎重に野党と調整を進める」(石破)としているが、実態はそんなに甘くない。裏舞台での食うか食われるかの暗闘が続く。言うまでもなく、ねじれの解消には裏工作と表の正式手続きの二つがある。裏は多数派工作、表は参院選挙勝利だ。自民党はとりあえず裏を先行させたのだ。みんなの党代表・渡辺喜美が悔し紛れに「与党がアメをばらまいて多数派工作をやった結果」と指摘するように、必死の“裏工作”が進展した結果だ。民主党はもはや“水に落ちた犬”となった。たたかれ続けるのだ。
安倍も「この1票差は『決められない政治』から『決める政治』への大きな第一歩だった」と述べているが、感慨は大きなものがあろう。過去の逆転国会は1989年の参院選後と1998年の参院選後にも発生しているが、本格的に「ねじれ国会」と称され、参院が政治闘争の舞台となったのは、2007年の参院選で自民党が惨敗して以来だ。安倍首相の時であり、民主党は小沢を中心に政権交代のチャンスとばかりに攻めまくり、安倍の下痢とノイローゼを誘って退陣させた。続く福田康夫も、麻生太郎もあえない最期をとげ、民主党は政権を獲得した。時代錯誤というか馬鹿の一つ覚えというか、この再現を狙ったのが参院議員会長・輿石東だ。「抵抗野党に戻る」と宣言して、尊敬する生活代表の小沢一郎と組み、虎視眈々と“ねじれ活用”を狙った。補正予算案反対に生活と、目立つことだけが信条でこのところ一段と軽さを増しているみんなの渡辺を引き込み、補正予算の修正案を踏み台にして反対ムードを盛り上げようとした。公共事業の大盤振る舞いを取り上げて、輿石は「古い自民党の復活」と追及しようとしたのだ。しかし輿石こそ「古い何でも反対の社会党の復活」そのものであり、誤算は足元から生じた。
植松恵美子、川崎稔二人の離党である。さらに岩本司も離党予備軍となっている。参院は民主党が87人、自民党が83人だが、二人の離党でその差は2議席となった。岩本が離党なら1議席となる。自民党の幹事長・溝手顕正が「民主党はさらに流動化する。まだまだ崩れる」と“不気味”な予言をしているとおり、昨年から続く離党減少はとどまるところを知らない。自民党は国会運営を「丁寧にやる」(石破)方針だが、筆者に言わせれば「丁寧に引っぱがす」のが本音だ。民主党の国会運営敗北の最大の理由は、安倍がアベノミクスを旗印に、国民の求心力を強め、支持率70%前後を確保、全党的な支持を得ていることであろう。これに対して、もともと求心力などない“人の良い”代表・海江田万里では太刀打ちできない。そればかりか、外れそうなたがを締められないのだ。国民の人気も政治力もある野田佳彦、前原誠司、岡田克也らを、総選挙敗北の“戦犯”扱いして退けては、アピールもしない。海江田は共同通信の世論調査で民主党の支持率が6%にまで落ちたことに「愕然とした」というが、まだまだ“地獄の底”は見えていない。
こうして、通常国会の初戦は自民党の圧勝に終わった。問題は最初のうまさが持続するかどうかだ。次は日銀総裁人事と来年度本予算だが、これも自民党ペースで進む流れだろう。日銀総裁人事は、「黒田東彦総裁」に愚にもつかない理由を挙げて維新の橋下徹と渡辺が反対を表明しているが、民主党内は容認論が広がっている。官房長官・菅義偉が2月26日、民主党政調会長・桜井充に人事漏洩を陳謝したが、これも“手続き”であろう。維新は橋下が反対しても議員団は賛成のムードが強い。橋下は議員団を「与党ぼけ」と切り捨てるが、維新がいつから与党になったのか。言葉は多いが、相変わらず切れ味は方向音痴の発言が多い。維新の国対委員長・小沢鋭仁は「黒田はベスト。橋下さんは政治的な相場観に外れている」と、真っ向から反対する始末。大阪のあんちゃんの中央政治への“相場観”が試されている。この自民党の攻勢は参院選挙まで続く。昨日も書いたように、参院における“正式な”ねじれ解消は、まず夏の参院選で実現する方向が一段と強まった。
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