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2013-02-04 06:49
石破派旗揚げで“ポスト安倍”がジワリ
杉浦 正章
政治評論家
さしずめ<無派閥という名で派閥出来上がり> といったところか。37人の石破派が自民党に誕生した。我慢ができなくなったのだ。というのも権力者は、古来政界でも企業でもナンバー2を叩くのが常識だが、首相・安倍晋三もその例外ではない。幹事長・石破茂 を「恐るべし」と思うからこそ、遠ざける。党役員も腹心らで構成し、石破包囲網を作る。石破側近らとしては「このままではつぶされる」という危機感があり、それが「無派閥連絡会」の立ち上げにつながった。かねてから石破が「派閥政治反対」を唱えていたから、奇妙きてれつな“無派閥派”を作ったのだ。石破が“ポスト安倍”狙いへと事実上の旗揚げをしたことになる。自民党の派閥は総選挙後軒並み拡大した。衆参で町村派80人、額賀派50人、岸田派40人、麻生派33人、二階派28人、石原派15人、大島派12人といったところだ。この中で37人が集まって石破派はスタートしたのだが、1月31日の初会合の数だけでは勢力は測れない。石破側近は「石破さんに言われてわざと少なめでスタートさせた」と漏らしている。石破の潜在勢力は1位の町村派に次ぐとみられている。というのも、総選挙圧勝は石破のここ数年の地方行脚が奏功している側面が大きい。119人に達する新人議員の多くが石破と物心両面でつながりがあり、“石破チルドレン”的な色彩を帯びる議員も多いのだ。
加えて各派を見渡せば、町村派は町村信孝が脳梗塞で選挙運動もろくろくできなかったことが物語るように、領袖とは名ばかり。額賀福志郎も度々総裁選で失敗して69歳になった。もう出馬と言っても無理だろう。したがってこの2大派閥は草刈り場だ。衆院議長になった伊吹文明も“一丁上がり”であり、大島理森も弱小派閥では動きようがない。外相・岸田文男はまだ海の物とも山の物とも区別が付かない。環境相の石原伸晃にいたっては、総裁選に敗北して以来、何か脂っ気が抜けて、小さくなったような印象を受ける。ただ一人、安倍が首相で復帰できるなら、おれだってと張り切っているのが麻生太郎だ。安倍は石破と仲の悪い麻生を副総理として内閣に入れた。麻生としては、病気を抱える安倍が万一退陣となれば、首相臨時代理のまま自民党総裁選で総裁に選出されて、首相に復帰する“夢”を描いていてもおかしくない。しかし、おかしくないと思っても首相急死で臨時代理になった例は、大平のときの官房長官・伊東正義と小渕の時のやはり官房長官・青木幹雄であり、いずれも首相にはなっていない。田中角栄が「伊東君がその気になれば後任になれた」と漏らしていたが、律義な伊東は固辞した。
しかし、麻生は狙っているのだ。その総裁選では石破が強敵になることは確実であり、今から叩けるだけ叩いておくというのが、麻生の戦術だ。だが72歳の高齢であり、よほどの幸運に恵まれない限り、再任の可能性はない。石破は安倍の包囲網に遭っているように見えるが、後継問題では本命中の本命といってよい。面白いのは「小泉進次郞首相説」だ。永田町の半可通やテレビの評論家までが、次は小泉とはやし立てる。なぜかというと青年局長だからだという。評論家の後藤謙次は2月3日のテレビで「小泉さんは青年局を母体にして総理総裁を目指す。イギリスでもキャメロンが39歳で党首となった」と褒めちぎたうえに、石破と拮抗するかのような分析をしたが、荒唐無稽(むけい)と言いたい。いくら総選挙圧勝で青年局が82人に急増したからといって、同局は自民党の1組織であり、派閥集合体ではない。その論理から言えば、総務会長だから首相になれる、政調会長だからなれる、というのと同じ事だ。
たしかに青年局長経験者は5人が首相になっている。竹下登、宇野宗佑、海部俊樹、安倍晋三、麻生太郎だが、いずれも派閥力学でなったのであり、青年局長だからなったのではない。後継争いともなれば、党の組織としての青年局が小泉擁立で一丸となって戦いに挑むなどと言う光景は、マンガでもあり得ない。もちろん石破は青年局の若手を支持基盤にするだろう。確かに小泉は、優秀な政治家としての素質を備えている。しかし、鳩山由紀夫や菅直人が適性に欠ける上に経験不足から失政の上に失政を重ねたように、次を狙うような誤判断をしてはならない。いま31歳だ。あと20年は“ぞうきん掛け”をして、党や内閣で勉強を積まなければならない。まさにやせ馬の先走りは大けがのもとだ。こうしてまだ気が早いが、自民党のポスト安倍問題は、各派の思惑を背景にジワリと動き始めたのだ。トップができれば候補者は次を目指して切磋琢磨するのは、権力闘争の常であり、別に悪いことではない。かえって党が活性化するのであり、石破のように「無派閥でござい」と銘打って無派閥派を作る心配など無用だ。スポーツ精神で堂々と権力闘争をすればよい。
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