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2006-09-19 11:49
アジア7カ国世論調査と対アジア政策
伊藤 英成
元衆議院議員
1.先般、読売新聞が韓国日報社、ギャラップ・グループと共同で実施した「アジア7カ国世論調査」の結果を目にした。ここでの7カ国は、日本、韓国、インド、インドネシア、マレーシア、タイおよびベトナムである。調査結果につき、私が注目した点は次の5点である。
(1)日本がアジアの発展に積極的な役割を果たしていると、韓国以外の各国は高く評価しているが、各国がアジアの発展のために日本に期待することとして、貿易や経済交流、技術支援などへの期待が大きい反面、アジアの立場を国際社会の中で主張すること、海賊・テロ対策、文化・人的交流、保健衛生面での協力等への日本への期待が、インドを除いて結構低い。
(2)日本が将来軍事大国になるか、あるいはすでに軍事大国である、と思っている人の割合が、日本では約19%に対し、他の各国ではほぼその倍の40%前後となっている。
(3)中国に対し日本・韓国以外の各国は「好印象」をもっている。中国の経済発展が自国経済に与える影響について、マイナス面のほうを多く見るのは日本、韓国で、他の国々はプラス面を多く評価している。また中国の発展がアジア全体の経済発展につながると回答している割合は、日本より他の国々全てが高い。
(4)日本との関係を良いと考える人は、インドネシア、タイは96%、インド、マレーシア、ベトナムも90-92%と非常に良いが、韓国では12%と非常に悪い。同じように、日本への信頼度でも、韓国では「信頼できない」が89%、他の国々では「信頼できる」がタイで92%、その他の4カ国は75-88%。
(5)米国に対する各国の見方は結構厳しく、また厳しくなってきている。米国に対し「非常に良い印象」「どちらかといえば良い印象」を回答している人の割合はそれぞれ、韓国3.6%、47.5%、インドネシア19.4%、38.2%、マレーシア15.1%、41.5%であり、他の4カ国に比し低い。さらに、95年調査時に比し、当時調査対象でなかったインドを除き各国とも、米国に対し「悪い印象」が増加している(とくに韓国、マレーシア、インドネシア、ベトナム)。
2.以上の点について、日本の対アジア政策として考慮すべきこととして、改めて次の5点を思った次第である。
(1)アジアでの日本の政治力・政治的発言力がまだ弱いこと、すなわち、アジアでの外交・安全保障ほかアジアの安定と発展のための枠組み・システムの構築や運営にもっと発言力や関与を示す必要性を思う。
(2)自衛隊の実情や日本国憲法等についての理解を深める努力・活動がもっと必要だし、日本の文化・社会等広報活動もまだまだ不十分なのだろう。
(3)日本以外の国々は概して中国に好印象を示しているが、大国中国の経済発展による恩恵の現実と中国の各国への積極的外交の成果がこの結果に寄与しているように思われる。(1)に述べた日本の政治力・外交の強化と日本文化等の広報活動の充実、が求められる。
(4)韓国の対日印象が良くないのは現下の情勢から推測はできるが、しかしお互い隣国同士、早く良好な関係を築きたいものである。今回の調査には中国は含まれていないが、中国との政治関係も良好なものにしなければならない。政経分離はなかなか難しいと思わねばならないし、隣国との関係改善はまさに政治の問題である。良好な首脳関係が決定的に重要な役割を果たすだろうと確信する。
(5)米国に対する各国の印象悪化について思うことは、日米関係は、日本にとってもちろん最重要であるが、日米関係のあり方を考えることの必要性と、対アジア政策の強化の必要性を一層思う。
3.いま自民党総裁選も最終局面である。今後の外交政策・アジア政策についてもっと論じて欲しいものである。上記世論調査には残念ながら中国が含まれていないが、日中が協力してアジアや世界の諸課題に取り組むようになりたいものである。
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