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2012-11-12 16:23
政治が守るべきもの:大学不認可騒動で
石崎 俊雄
龍谷大学教授
田中文部科学大臣が「新設大学3校を一旦不認可にする」と発言した後、わずか5日後に前言を翻し、「認可する」との発言を行った。この一連の騒動で振り回された方も多くおられたことと思う。前科のある田中大臣のこの行動に多くの国民は「またか!」という思いを抱いたに違いない。田中真紀子氏を大臣に就けることでこのような騒動が起きることは十分に予見できたはずである。このような人事を行った民主党政権は猛省をしなければならないが、この人事以上に反省すべきは藤村官房長官を初めとする政権幹部の対応である。すなわち、藤村官房長官を初めとする民主党政権幹部の多くは田中大臣の行動は適切さを欠いているものの、問題提起の考えは正しいと擁護をしている点である。
私は民主党のこの姿勢が問題だと認識しており、全く改善されていないという思いを強くしている。というのは、今回の騒動は沖縄の普天間基地問題で鳩山元首相が取った行動と本質的に全く同じであり、それを良しとする民主党の姿勢は全く変わっていないという点である。田中大臣の問題提起は、18歳人口が大幅に減少し大学経営が悪化している中で新たに新設大学を認可すべきかということであったと思う。一方、鳩山元首相の問題提起は、日本の安全保障のためとはいえ沖縄に過度に基地が集中し沖縄の人だけに負担を強いるのがいいのかということであった。もちろん、どちらの主張にも一理があり、それを真剣に検討していくという姿勢は大変重要なことである。しかしながら、普天間問題では「最低でも県外」と一国の総理大臣が発言したことの影響はどうであったであろうか?田中大臣の「認可しない」という発言も全くこれに同じである。
大学問題にしても沖縄問題にしても、その問題提起は誰もが納得するものである。何とかその状況を解決できるものであれば何とかしたいものだと誰しもが思っている。しかしそれを一国の責任者である大臣が口に出し、しかもそれを撤回するという事態はとても政治と言えるものではない。発言したことによって何か事態が改善の方向に向かうのであれば構わないが、社会を混乱に落としいれ、さらに事態を悪化させている。評論家は発言だけでも許されるが、政治家には問題を解決する政策を実行することが求められているのである。
今回の民主党の対応は、この基本的な考えが普天間問題の後も政党として確立できていないということを如実に示すものである。民主党は早くこのことに気づき、党の体質を変えていく必要がある。そうしなければ、第3、第4の普天間事件が起きる懸念は払拭できない。近づく総選挙で敗北するから良いというものではなく、日本の政治を支える大政党としての自覚が必要である。
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