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2012-11-09 06:53
ようやく「年内解散」に“気付いた”マスコミ
杉浦 正章
政治評論家
繰り返し「政局観」に欠ける報道を続けて来たマスコミも、遅まきながら「年内解散」に“気付いた”ようだ。それも慎重なNHKが11月8日朝から「首相、年内視野に解散時期を探る」と年内解散に踏み切ってから、にわかに追随し始めた。だらしのない「赤信号みんなで渡れば怖くない」の政治記事だ。政局を判断する能力の要諦は「政局観」があるかどうかにかかっている。洞察力のある、また政治記者本能に根ざしたともいえる「政局観」があるなしで、解散の判断が出来るかどうかが左右される。さすがにNHKはこれまで「解散なし」とは報じなかったが、その他はおおむね「解散なし」ばかりか、幹事長・輿石東の宣伝に乗せられて、なんと「衆参同日選挙」の可能性まで報じ、解散の判断は揺れに揺れた。NHKが年内解散と報ずる根拠は、判断力に加えて、場合によっては野田自身の懐に飛び込んで聞き出した公算がある。昔の官邸キャップは、政局緊迫の時期は、自社の番記者が気付かないうちに首相の居間に忍び込み、直接話を聞いて、素知らぬ顔で記事を書いたものだ。そうした取材が背景にあるに違いない。
既に報じられた内容から判断しても、早期解散を示唆する材料は多い。8日の本会議では、まず野田が「解散時期を判断する環境整備の中でも、とりわけ急がなければならないテーマとして、赤字国債発行法案の成立や、衆議院の1票の格差の是正と定数削減の問題、社会保障制度改革国民会議を挙げている。環境整備が整ったそのときにおいて、きちっと自分の判断をしていきたいと考えていることにいささかも変更はない」と述べた。一見過去の言葉の繰り返しのように聞こえるが、NHKの報道を知っての答弁であり、「いささかも変更ない」と述べたことがポイントだ。前日の7日には一年生議員との会合で解散を聞かれ、「能動的に判断したい」と漏らした。これが「やるぞ」の示唆でなくて何であろうか。さらに重要ポイントがある。それは8日になって12月に予定されていた日ロ首脳会談を延期したことだ。マスコミの多くが同首脳会談があるから「解散はない」と判断してきたが、ロシア側の日程調整がつかなくなったことを理由に延期したのだ。大統領・プーチンが辞める首相と会っても仕方がないと判断した可能性があるが、むしろ解散を意識した延期であろう。
8日には野田の掲げる解散3条件のうち赤字国債法案が15日に衆院を通過し、19日か21日にも成立するめどがついた。残る関門は選挙制度に絞られる。民主党内には愚かにも「0増5減」成立を「定数削減」と絡めることで遅らせて、解散の環境を作ろうとしない空気が濃厚だ。だが幹事長代行・安住淳は「0増5減」の先行採決に前向きであり、輿石がネックとなっている。しかし、このところ輿石の突っ張りもどこか弱々しくなってきている。永田町には「輿石が解散ないと言っているのは、参院のことではないか」というジョークが飛び始めた。確かに参院には解散はない。一方で輿石は「解散は首相が判断すること」とも述べており、突っ張りは離党防止策の側面が強いのだろう。1票の格差と定数是正は別々の法案で出される可能性が強く、その場合どさくさに紛れて、1票の格差だけ先行させれば、解散の条件は整う。国民会議の設置などは半日あればできる。
こうして共同通信が「首相、年内解散視野」と報ずれば、読売も「首相年内解散を検討」とトップで踏み切った。日経は「年内解散、緊張高まる」、産経も「年内解散1月選挙浮上」とそれぞれトップだ。民放各社も記者の解説で年内解散の方向を打ち出している。朝日だけが出遅れた。ここまでくると、解散への流れは止められない。民主党内にはこの期に及んでも「離党する」と息巻く議員らがいるが、「もう勝手にしろ」と言いたい。「離党」で解散を食い止めるなどの動きは、あまりにも未練がましい。まるで見苦しい“命乞い”そのものに見える。具体的な選挙日程は最短で12月9日だが、いささか日程がきつい、同月16日の都知事選とのダブル選挙や、佐藤栄作がやった年末土曜日の22日選挙、年をまたいで年明け選挙などさまざまなケースが考えられる。いずれになるかなどは断定できる根拠はまだ不十分だ。
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