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2012-10-04 06:58
維新で内ゲバ、タコの共食い状態に
杉浦 正章
政治評論家
まるで「一夏の恋だったのね、維新の会」だ。落ち目というのは哀れなもので、支持率が低下し始めると、早くも内輪もめだ。築城の最中だというのに、国会議員団が党首の橋下徹に反乱を起こした。「橋下独裁にはしない」と議員がクギを刺せば、橋下は記者会見で「ボクが決める」と、世間に主導権争いを公言してしまった。普通の政治家なら“内紛”は表面化させずに、“胆力”で押さえるべきところだが、橋下にはそれが出来ない。これまでの生き様が、テレビメディア頼りで、笑って貰ってなんぼのタレント稼業だからだ。何でもメディアに頼るのだ。風が止まれば、風車も止まる。後ろ足で砂をかけて、既成政党を離脱した議員らも、さぞお困りだろう。新党「日本維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)の国会議員団が10月3日、初めての両院議員総会を開き、松野頼久衆院議員を代表に決めた。衆院議員・松浪健太を幹事長に据えた。きっかけとなったのは、その松浪のブログだ。「我々は、もはやお客さんではない。言うべきことは忌憚なく言わせてもらう」と述べて、橋下を独裁と決めつけた。松野も「法案の採決は国会議員しかできない。当然、国会のことは議員団で決める」と同調している。
発端は橋下の「竹島の日韓共同管理」発言にあるようだ。自らの領土主権を放棄するような荒唐無稽(むけい)さに、さすがの議員団も“切れた”のだ。これに対して橋下も、頭から押さえにかかった。「有権者が国会議員についてくるなら、別に維新の会に所属しなくてもいいのではないか」と怒りをあらわにした。「変なパフォーマンスに走らないでくれ」と、自分がパフォーマンスの権化であることを棚上げに批判した。その発言には、維新の会の“風”を頼りに所属政党を裏切って入党してきたのに何を言うか、という思いがありありとみられる。頼ってきておいて、文句を言うなんて、本末転倒だというわけだ。橋下は「ボクには拒否権がある」と記者団に主張した。記者団に言う前に、議員らを説得するのが先であろうに、その気配は見られない。
確かに松浪が言うように、維新の会は橋下の独裁体制が敷かれていて、国会議員の発言権などない。大阪維新の会と全く同レベルの扱いだ。国会議員はいちいち橋下の判断を仰がなくてはならない形になっている。党規約によると、橋下が最高議決機関である「全体会議」を招集し、国会対策を決める「執行役員会」も主宰する。国会議員団は下部組織であり、松野が党副代表として執行役員会に加わる方向だが、議決は過半数となっていて、意見は反映されない可能性が高い。普通の政党は、これではもたない。議会制民主主義の政党としてはあり得ない独裁遠隔操縦体制だ。ヒットラー台頭の基盤となった政党「国家社会主義ドイツ労働者党」を思い起こさせる。要するに橋下にしてみれば、自分への風だけで成り立つ政党である、という思いが強いのだろう。橋下を除けば、ろくろく名前も売れていない国会議員と、一旗揚げようと野望を抱く816人もの立候補応募者だけで、これでは正に烏合(うごう)の衆だ。
それならば、橋下が怖じけつかないで、自ら立候補すれば問題は片付くのだが、なぜか手を挙げないと断言している。大阪からの遠隔操縦が可能だと思っている。ここに「議員の反乱」の核心があるのだ。議員らは、たとえ当選しても、大阪にいちいちお伺いを立てなければ物事が進まないようでは、国政のテンポに付いていけないと思っているのだろう。駆け出しでも、それくらいのことには気が付く。そのジレンマが浮き彫りになったのが、この「タコの共食い」なのだ。しかし議員団は、重要ポイントを忘れている。それは「橋下なくして、維新なし」の現実だ。政党支持率も、比例での投票先も、失速状態にある。最新の世論調査でも、尖閣をめぐる国難を機に、有権者の政治を見る“真剣度”が変わった。朝日の調査は、政党支持率が自民21%に対して、維新2%。比例区投票先も自民30%で、維新4%。維新は責任政党とみなされていないのだ。橋下は「まだまだ下がっていくだろう。実像にだんだん近づいてきているのではないか」と評論家のようなことを言っているが、立候補の300人に最低でも5千万円はかかる選挙費用を負担させて、1990年のオウムと同じで、供託金没収ではいかんともしがたい。朝日川柳には「こんなので、選挙に臨む良い度胸」とあるが、真夏の恋は、秋風が吹いて冷静になると、破れるものなのだ。松浪が、見限った自民党の復調の流れに、焦ってジタバタしているのも無理はない。
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