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2012-08-30 06:47
いよいよ強まる臨時国会解散の流れ
杉浦 正章
政治評論家
「消費税反対の問責」に自民党が驚天動地の同調をしたのはなぜか。「ひとえに臨時国会解散を成し遂げるためだ」と答えるのでは、普通の政治記者。もっと深読みすると、去る8月8日の野田・谷垣会談では、「問責までやるが、解散・総選挙後は、民・自・公路線を進める」で暗黙の合意があったのだ。だから、自民党総裁・谷垣禎一が「近いうち解散ご破算論」に「ちゃんちゃらおかしい」と反論したのだ。野田も29日、選挙準備を進めるよう指示しており、いよいよ政局は「10月解散・11月総選挙」に向かって、流れを加速しそうだ。それも「話し合い解散」となりそうだ。目の前の餌を突っつくニワトリのように、それ以上先のことを考えられないのだろう。民放政治記者の大勢は「来年解散」の反応だ。その理由が最高裁の違憲判決で、1票の格差是正が実現できていないからだそうだ。しかし、筆者が28日の原稿で、最高裁の「違憲状態」の判決があるからと言って、時の政権による解散・総選挙が不可能にはならないと指摘した通りの流れが生じている。幹事長・輿石東が解散を少しでも先延ばしにしようとして、「0増5減」を潰したが、衆院だけは可決した。少なくとも衆院にはその意志があるのだから、最高裁も安易に無効判決は出せないと言う見方が強いのだ。いったん出された総選挙の民意を、司法が覆して行政を大混乱させることは出来にくい。ましてや秋の臨時国会で定数是正が実現すれば、次の総選挙には間に合わなくても、最高裁の判断は選挙無効とはなるまい。
だから、野田は依然解散に関してはフリーハンドを確保しているとみた方がよい。そこで「ちゃんちゃらおかしい」だが、谷垣の発言は、民主党政調会長・前原誠司などから「近いうち解散は白紙」という“ご破算論”が出ていることに対するものだ。谷垣は、「小細工的な批判はちゃんちゃらおかしい」と反論した上で、「3党合意を大事にしていく観点からいっても、ただちに解散しなければ、それを成し遂げていく態勢はできない」と述べたのだ。これは問責決議に同調という究極の対決姿勢を示しながらも、なお消費増税を実現した民・自・公3党路線を追求する構えであることを物語っている。総選挙で自民、公明の連立でも過半数に届かないケースを想定して、選挙後も3党路線を維持する構えであることを物語っている。これこそが野田・谷垣会談のポイントであるのだ。選挙後維新の会との連立を目指す安倍晋三らの動きとは路線上の対立となる。
それにつけても、「消費税反対」や「3党合意批判」が盛り込まれた7党問責に同調する必要がなぜあったかといえば、「大目的のためには、肥だめに手を突っ込まなければならないことだってある」と参院自民党幹部は漏らしている。問責で野田政権との対決路線を作り上げておかないと、10月解散に追い込めなくなるという切羽詰まった状況があったのだ。だから小沢一郎の仕掛けた最後の嫌がらせにも、韓信の股くぐりで対処せざるを得なかったのだ。将来の大望のために、世論の批判を覚悟で一時の辱めに耐えたのだ。一方で、野田も注目すべき発言をしている。29日の民主党選挙対策会議に出席し、「衆参両院とも任期が1年を切った。常在戦場で着々と準備を進めてもらいたい」と述べた。首相が「常在戦場」という言葉を使うときは、解散が迫っているときに限られる。1年先の解散ではこの言葉は使わない。要するに、野田・谷垣会談では「10月解散」が約束されたのだ。永田町では会談で野田が「11月解散にできないか」と持ちかけたが、谷垣は「駄目だ」と拒否した話が漏れているのだ。こうして、「“肥だめ問責決議”可決→対立状態のまま推移→この間事実上の選挙戦が展開→臨時国会を迎える」という構図が出来上がったのだ。
ということは、空転国会の最中から選挙戦は始まることになる。「選挙は来年」などと“淺読み”しているノーテンキな議員は皆落選だ。選挙に全力を挙げるために、ここで議員らは選挙資金を放出する。1か月も過ぎると、資金が枯渇して、与野党双方から「もう何でもいい。解散してくれ」の合唱が始まるのだ。野田は、9月21日の民主党代表選で再選された後、党役員・内閣改造人事に着手して、足を引っ張り続けた輿石に代わって選挙の顔になる幹事長を据えるだろう。恐らく前原か、仙谷由人を起用する可能性がある。選挙に弱い岡田克也はまずない。こうして10月を迎えることになるが、野田は、10月12日から3日間東京で開かれる国際通貨基金・世界銀行の年次総会に出席した後、臨時国会を招集することになろう。そのころには与野党とも少しは頭が冷えているから、赤字国債発行法案と「0増5減」位は成立させた上での解散を目指す可能性が高い。つまり話し合い解散となる公算が大きい。
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