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2012-05-17 06:53
極秘会談失敗で大幅会期延長不可避の流れ
杉浦 正章
政治評論家
不成立に終わった民主党と自民党の第2回極秘党首会談と、実現した極秘幹事長会談の結果から見えてくるものは、終盤国会における消費税政局の展望が全く開けなかったことであろう。消費増税法案の会期内成立は極めて困難となり、大幅会期延長が必至の流れだ。通常国会の会期延長は、国会法の規定に基づき1回しかできないから、短期間では法案不成立の危険がある。ここは昨年と同様に、8月までの大幅延長が不可避となりそうだ。それでも成立しない場合は、1日だけ開けて臨時国会を召集するという非常手段もあるが、まだ未知数だ。2月25日に次ぐ第2回極秘党首会談が成立しなかった過程を見ると、野田の心理状態が浮き彫りになって、面白い。野田が、自民党総裁・谷垣禎一と元代表・小沢一郎の間で揺れ動いていることが分かる。会談不成立をスクープした毎日の報道によると、野田からの再会談の打診は、消費増税法案に反対する小沢に対して政治資金規正法違反事件の無罪判決が出た4月26日頃のようだ。官房長官・藤村修が自民党副総裁・大島理森に「首相が訪米から戻る連休後半に、党首会談をお願いしたい」と5月3〜5日の日程を提示したという。
藤村はこの記事について16日、「なぜああいうカギかっこ付きの発言にされたのか、意味が分からない。抗議している」と怒って見せた。しかし、谷垣が「自民党内で『連休中に首相と会ったらどうか』と言う人がいたが、問責決議が片付いておらず、『談合はできない』と言った記憶がある」と、事実上認めている。いくらばれたからといって、藤村は、カギかっこが付いていると言って怒るのも、大人げない。 そこで野田の心理状態だが、野田は無罪判決を受けた小沢の党員資格停止処分を解除する幹事長・輿石東の方針を黙認している。しかし、これで小沢がまた嵩(かさ)にかかって反消費税の動きを強めると思ったに違いない。そこで、野田は2月の極秘会談を思い出した。会談では野田が「話し合い解散」をほのめかした結果、谷垣も上機嫌で成功裏に終わっている。
野田は、これを再現しようと思ったか、極秘会談の日程を提案した。しかし、両党関係は、2閣僚への問責決議可決で冷え切っており、「小沢切り」に出られない野田への不満が自民党側にうっ積していた。2月のようにことは進まないことは、最初から分かっているはずだった。とりわけ谷垣は、輿石が小沢の意向を受けて消費増税法案の継続審議を指向していること、これを野田が抑え切れていないことに、不満を募らせていた。いくら野田が柳の下の2匹目の“ドジョウ”を狙っても、無理があったのだ。一方で、この極秘会談実現失敗を知った輿石は、喜んだに違いない。今度はおれの出番だとばかりに、14日に自民党幹事長・石原伸晃と極秘に会談、打開策を見いだそうとした。しかし、谷垣と歩調を合わせる石原が、あわよくば継続審議を狙う輿石と話が合うわけがない。会談はとても展望が開けるようなものではなかったに違いない。輿石がその後頻繁に解散先送りの発言を繰り返し始めたことからもうかがえる。かくして野田と輿石の自民党との接触は、いずれも終盤国会の展望を切り開けないままに終わった。
折から特別委員会における消費増税法案の審議も遅れがちだ。17日から質疑に入るものの、野党質問は21日からとなった。会期末の6月21日まで残りはわずか1か月間。民主党国対委員長の城島光力はかつて、「連日、委員会を運営すれば、6月4日の週あたりに審議の100時間が見えてくるので目安が付く」と述べているが、そうは問屋が卸さない状態となって来た。懸案は消費増税法案だけでなく、宙ぶらりんの2閣僚問責問題、赤字国債発行法案、定数是正、原子力規制庁設置法案など重要案件がひしめいている。その上に、参院では首相問責決議の上程もささやかれ始めている。野田は消費増税法案の実質審議が始まる前から「会期延長の話はない」としているが、ひしめく課題を解決するにはとても時間が足りない状況に立ち至っている。昨年は首相・菅直人が窮地に追い詰められて、6月22日で終わる会期を70日間延長して8月31日までとした。今年は9月には民主党も自民党も党首選挙を控えており、大幅延長と言っても8月いっぱいが限度だろう。いずれにせよ、土俵を広げての勝負にならざるを得ないものとみられる。
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