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2012-05-03 08:30
メーデーのOWS運動を思う
島 M. ゆうこ
エッセイスト
昨日5月1日〔当地時間)は国際労働者の日とあって、イギリス、オーストラリア、ギリシャ、トルコ、アメリカを含む世界の125都市でプロテストが行われた。米国では、「ウオール・ストリートを占拠する(OWS)」運動の活動家達が、この日だけは学校も、職場も、全てを放棄し、プロテストに参加するよう、テキスト・メッセージを市民に送信するなど、事前に準備を行ったようだ。基本的には、平和的にメーデーを祝うことが目的だと思われる。規模は各地によって異なるが、総体的に、このプロテストの動機は(1)メーデーの行事として一般ストライキに参加する、(2)OWS運動が学生と労働者の合同を呼びかけたプロテストを目的とする(3)民主主義を取り戻す運動(RDM)への参加などに分類できる。
上記(2)のOWS運動は、昨年9月17日にニューヨークの金融街で、「アラブの春」に触発された学生達が開始したことは既に知られている。彼等の明白な目的は、2010年1月、最高裁が「企業も人である」として、無限の選挙資金の提供を合法化したことに対する抗議、「公平な税制改革」の要求、「不正な住宅ローン慣行」を原因とした相次ぐ抵当流れに対する抗議である。(3)のRDMの活動の核心部は、OWSと同様、憲法改正の要求、大企業が政治に影響を与えている現状の変革、総負債額が1兆ドルと言われている学生ローンの救済などのスローガンを掲げているものと思われる。最近の抗議活動も、そのプラカードには「銀行救済より国民の救済を」とのメッセージも目立ち、公平で正常な経済回復が最も重要な課題とされている。
ニューヨークではOWS運動の発祥地となったズコッティ公園からウォール・ストリートの金融街までの行進が盛大であった。また、ニューヨークの労働組合組織のグループは、ユニオン・スクウェアからウォール・ストリートまでの区間で、学生、移民、労働者などのグループも参加して、大規模のデモが行われたため、交通の混乱を懸念した機動隊が出動した。ワシントンDCの区域では、メリディアン・ヒル・パークからホワイト・ハウスまで参加者が行進。当日の『ワシントン・ポスト』紙によると、オキュパイ(占拠)運動の活動家達は、5月18日―19日にかけてキャンプ・デイビスで開催されるG8首脳会談、及び5月20日-21日にシカゴで開催予定のNATO首脳会議の際もプロテストを計画している。
全国に拡大したOWS運動の現在の経済的背景と、全米労働者人口の20%が失業した1890年代の経済恐慌の時代を比較した場合、いずれも経済格差に不満を訴えた点で似ている。当時の不景気は1930年代に匹敵するような悲惨な状況で、企業、鉄道産業が次々に倒産し、農民一揆や労働者のストライキが各地で発生した。1880年以降は、産業経済が発達し、市場拡大と農民の土地所有が可能になったものの、農産物の価格が低下したことで、特に土地のテナント農民に大きな打撃を与えた。このような農民を中心に、労働者、中産階級が一体となって、貧富の格差を抗議するため、ワシントンに行進を開始したのは1894年である。現在のOWSの不満は、このような過去の状況と比較して、本質的に異なるものがある。市場の流れを簡単に変えることは不可能であっても、彼らが具体的に要求している金融規制と、富豪層が有利になっている部分の税制改革、無限の政治献金の改正は、決して不可能ではないはずだ。
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