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2012-04-14 11:44
こんな野放し外交は聞いたことがない
尾形 宣夫
ジャーナリスト
何年国会議員をやっているのか考える気にもならないが、鳩山元首相がイランを訪問しアフマディネジャド大統領との会談で、イランやシリアの核開発疑惑問題で「IAEAは二重基準」と言ったかどうかで、また元首相の軽い〝外交〟がやり玉に上がっている。野党・自民党が早速かみついたのは当然で、国会に呼んで真意を話せと怒っている。野田政権は、またも余計な攻撃材料を野党に与えたとおかんむりだが、今さら「言ったの、言わない」などと言い合ったところで、何の解決にもならない。呆れてモノが言えない日本外交の体たらくをさらしただけである。イランの核開発をやめさせようと欧米各国はイラン制裁の強硬姿勢を取っているが、これに対しイランはアラブ産油国の原油の通り道であるホルムズ海峡を封鎖すると一歩も引かない構えだ。そんな時期のイラン訪問である。大体、中東情勢が緊迫化するこの時期に、なぜ鳩山氏がイランを訪問しなければならないのか、国民には分からない。
元首相とすれば、民主党の外交担当の最高顧問が「一肌脱ごう」と思い立ったのかもしれないが、相手は核開発では欧米主要国を相手に一歩も引かない強気な外交を続けている。対日感情は比較的いいようだが、だからといって日本も加わった実質的な制裁が始まっている状況の下で、各国とも事前の調整もせずに訪問したことは、あまりにも緊張感が欠けた行動であると言わざるをえない。「二重基準」発言は、イラン大統領府のウェブサイトが公表した元首相と大統領との会談内容で明らかにされた。同国から帰国した元首相は「捏造だ、そんなことは発言していない」と反発、イラン側に説明を求めているが、話は水掛け論になっている。
元首相の脇の甘さを知っている米政府は「イランに利用されるだけ」と不快感を示し、自省を求めていた。野田首相も元首相の出発直前まで訪問中止を要請していた。元首相は、そうした懸念を振り切って日本を発ったのである。その結果は、米政府の懸念が的中してしまった。鳩山元首相の政治・外交感覚で思い出すのは、沖縄・普天間移設問題だ。「最低でも県外移設」と再三言って沖縄県民をその気にさせた。ところがそれが難しくなったら、次は「私には(移設の)腹案がある」と思わせぶりなことを言いだした。「腹案」は鹿児島県の馬毛島を指してのことだったが、これも根回しなしの発言で撤回。最後には「考えれば考えるほど(米軍の)抑止力が必要」などと、普天間飛行場の移設候補地は旧自公政権当時の日米合意どおりの辺野古に移設することで収まってしまった。
何のことはない、双六で言えば振り出しに戻ったのである。およそ一国の首相とは思えない迷走発言を繰り返した元首相だ。そして、元首相は自責の念に駆られるように次の衆院選には出馬しないと議員辞職を明言したのである。だがこの「議員辞職」も、いつの間にかうやむやとなり、民主党内紛の一方の主役として振る舞った姿は、国民のよく知るところだ。消費増税問題で立ち往生気味の野田政権にとって、今回の元首相が投じた問題は深刻と言わざるをえない。野田首相が鳩山氏を外交担当の最高顧問としたのも、党内亀裂が深刻な野田政権の党内融和策の一つだ。それが裏目に出たのだから、首相は面白かろうはずもない。要らぬ騒ぎを持ち込んでくれた、と苦虫をかみつぶしているだろう。再三指摘しているが、民主党政権の統率力のなさは政権交代から3年も経っているのに一向に直らない。いや、直そうという意識が党内にないのかもしれない。求心力のない野田政権を象徴するような「春の珍事」などと笑ってはいられない。
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