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2006-08-03 15:41
日本とASEANは国家によるテロリズムにも対策を講ぜよ
鏡見 伸一
塾講師
2004年11月に日・ASEAN首脳会議において「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日・ASEAN共同宣言」が採択されました。これは、日本とASEAN諸国が「テロ」に一致して反対し、テロ対策を行っていくという意思表示です。その後も、機能的協力の一環としてASEANと日本の間で、テロ対策は少しずつですが進んでいるように見受けられます。
しかし、「テロ対策」を強化する前に、まず日本とASEANは、テロリズムの定義を「政治目的を達成するために非政府組織が行う非戦闘員に対する暴力行為」(国連安保理決議1540号)から、国家によるテロリズムも考慮して、「政治目的を達成するために非戦闘員を対象として行われる、平和時における戦争犯罪行為」へと変更すべきだと私は考えます。以下に理由を述べます。
まず、国家がテロ対策を名目に人権侵害や暴力行為を行うのを未然に防ぐためです。東アジアにおいて「自由と民主主義」が正当性を得るためには、非暴力的な反政府運動家や分離独立主義者が「テロリスト」として収監され、あるいは殺害されるようなことがあってはなりません。
さらに、国家が「テロ対策」という名目で暴力を濫用することによって、民衆の支持が過激なイデオロギー集団に集まるのを防ぐ必要があるからです。例えば、インドネシア政府はアチェ特別州の独立武装闘争を「テロ行為」と見なし掃討作戦を行っていますが、国軍の軍事行動によって一般市民にも被害が及び、結果として過激派分子が民衆の支持を集めるという悪循環に陥っています。また、民主的選挙で選ばれたハマスに対するイスラエルの攻撃や、ロシア軍のチェチェンでの人権侵害や誘拐行為なども、東南アジアのイスラム過激派が自らの暴力を正当化することを助けています。
そして、今後、日本とASEANが共同して東アジアの平和と繁栄を実現していくためには、国家の枠組みを超えた普遍的価値観が形成・共有される必要があり、「非戦闘員を標的としたいかなる組織のいかなる戦争犯罪行為も許さない」という意思表示とその実践は、その価値観形成の第一歩になると期待されるからです。
よって、日本とASEANは、非正規武装組織のテロリズムを防ぐために国境管理や資金源対策を行うだけでなく、国家によるテロリズムも非政府組織によるテロリズムと同様に非難し、「平和時における戦争犯罪」を行う国家への資金流入制限や武器の拡散防止策などを積極的に行っていく必要があると私は思います。
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