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2012-02-23 20:34
第6回「太平洋・島サミット」に期待する
高峰 康修
日本国際フォーラム 客員主任研究員
今年の5月25・26日に、沖縄県名護市で、第6回「太平洋・島サミット(PALM6)」が開催される。「太平洋・島サミット」は、「太平洋島嶼国・地域が直面する様々な問題について、首脳レベルで率直に意見交換を行うことによって、緊密な協力関係を構築し、日本と太平洋島嶼国の絆を強化するために、1997年から3年に一度開催されている首脳会議」(外務省HPより)である。「太平洋・島サミット」は、我が国がイニシアティヴをとって発足させた、海洋国家に相応しい取り組みである。PALM6では、日本とクック諸島が共同議長国を務め、ミクロネシア連邦、フィジー、キリバス、マーシャル、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン、トンガ、ツバル、バヌアツ、オーストラリア、ニュージーランド、米国が参加する。今回注目すべき点は、米国の初参加である。さらに、日本政府は、PALM6において、地域の海洋安全保障を議題とするよう提案する方針である。これは、太平洋・島サミットの意義を高からしめる、画期的なことである。米国が参加し、海洋安全保障を議題とするとなれば、当然、狙いは対中牽制である。
中国は、太平洋島嶼国への浸透を図っている。その意図は、太平洋におけるプレゼンス強化、資源確保、豪州牽制、台湾への圧力などである。太平洋島嶼国への浸透がなぜ台湾への圧力となるのかといえば、太平洋島嶼国には台湾と外交関係を結んでいる国が少なくないからである。我が国も、太平洋島嶼国には、重大な関心を持って来た。この地域は、歴史的にも我が国との結びつきが強く、マグロ類をはじめとする水産資源の産地であり、プルトニウムの通過海域でもある。したがって、太平洋島嶼国の安定と繁栄は我が国の国益に繋がるが、これらの国・地域は脆弱である。そこで、太平洋・島サミットのようなものを開催することで、共同体的対応をする必要が出てくるのである。従来、太平洋・島サミットでは、持続的開発、人材育成、人間の安全保障、環境問題などの課題を中心に取り上げてきたが、2001年の9・11以降は、テロ・国際犯罪対策や紛争解決といった、安全保障に関する議題も取り上げるようになって来ていた。それが、PALM6では、海洋安全保障を真正面から取り上げるに至ったのである。
そして、昨年センセーショナルに打ち出された米国の「アジア回帰」政策は、太平洋島嶼国をも重視することを明確にした。こうして、太平洋・島サミットと日米同盟ががっちりとリンクする環境が調ってきたのである。ただ、海洋安全保障を議題とするといっても、性急に結果を求めるべきではない。そもそも、太平洋島嶼国は、自国の海上保安力すらままならない。沿岸警備艇を供与しても、施設や人員、そして法整備が十分でなく、活用できていない。それならば、さしあたってシップライダーズ方式のほうがよいという話になっているようである。シップライダーズ方式とは、米国コストガードの警備艇に島嶼国の海上保安要員が乗船し、海上警備活動を行うという形態である。もちろん、これが、米国のコストガードではなく、豪州海軍であってもよいわけである。我が国も、海保による各国の海上保安要員への訓練などを通して貢献できよう。米軍や豪州軍の艦船が寄港できる港湾を建設していく必要もある。
しかし、最終的には、やはり、各国の治安能力を高めることが不可欠である。このことを踏まえれば、開発援助は重要な柱であり続けるが、グッド・ガバナンス(良い統治)を向上させることを明確な目的と位置づける必要がある。フィジーで起こっているような政情不安定は、「好ましくない国」の介入を招く原因となる。グッド・ガバナンスの確立・向上は、こうした事態を防ぐことになる。これを下支えするのは、統治機構や法の整備と、経済発展が車の両輪となる。太平洋・島サミットで海洋安全保障を論じるというのは、正しい方向性であるが、短期的方策と長期的方策を適切に組み合わせて、地域の海洋安全保障を高めていかなければならない。その取り組みの中で、太平洋島嶼国と日米豪NZの共同体意識を高めていくべきであり、我が国は、今後ともその旗振り役たるべきである。PALM6には大いに期待したい。
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