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2012-02-11 12:49
米国政府と銀行間の和解策は本格的救済措置になり得るか?
島 M. ゆうこ
エッセイスト
オバマ大統領は、昨日〔当地時間2月9日〕ホワイト・ハウスから「住宅差し押さえ問題で主要銀行との協議が合意に達した」旨の声明を発表し、最大の打撃を受けた家主の救済を迅速にするため、これらの銀行が賠償金を充てることで「画期的な和解に達した」と話した。余裕がないことを承知の上で、住宅ローン契約を交わした双方の責任、「素早い現金獲得を求めた投機者や、多大な利益を目論みリスクの高い住宅ローンを設定した銀行側の責任」など、総括的責任について手短かに述べた。また、「多くの場合、差し押さえ合法性の是非さえ立証されていなかった」ことや、「差し押さえのプロセスを迅速化するため偽造文書に虚偽署名するプロセスを採用、またはその書類を読む事さえしなかった」とずさんな事実を述べ、改めてこれらの慣行がいかに無責任で間違っていたかを強調した。2010年10月、複数のメデイアは、ある銀行の元署名担当者が「このような書類が何であるかを理解していなかった」と告白した事実や「ロボ・サインナー」と呼ばれる住宅ローン契約に関する署名担当者を雇う銀行の裏側を報じた。その後、約16ヶ月間の協議を経て、米政府は遂に「画期的な和解」を得たのである。
オバマ大統領は、和解条件には、高い利息率で首が回らなくなっている借り手の住宅ローンを再編成すること、負債額が持ち家価値より超過する家主に対してローンを減少させること、既に「略奪的ローン」の犠牲者になっている人達に何らかの正当な措置を構じ、この混乱の原因となったビジネス慣行に対して、政府が調査できることにも言及した。これらの措置は、1月24日の一般教書演説でも大統領が言明した通り、「リスクの高い住宅ローンの販売」に対する政府の調査権限をフルに認めるものであり、「この調査は、すでに申し分なく実施中である」と述べている。「アメリカン・ドリームを打ち砕かれた人々にとっては、報酬額や軌道修正に向けた措置も充分であるとは言えない」とし、「この和解により総体的な住宅市場の回復を保証することはできない」ことを明確にした上で、銀行の公約の不履行に対しては厳然たる姿勢で臨むことを明白にした。
この協議は、オクラホマ州を除く全ての州と連邦政府側が5銀行との間で行ったものである。これらの銀行が負担する合計金額は約250億ドルであり、各銀行の負担額はそれぞれ異なる。2月9日の『ダウ・ジョーンズ・ニュースワイヤー』によると、バンク・オブ・アメリカが最も多く118億ドル、JPモルガン及びウェル・ファーゴはいずれも53億ドル、シティ・グループは22億ドル、アライ・ファイナンシャルは3億1千万ドルをそれぞれ負担することになっている。協議の要点は次の通りである。(1)銀行を処罰することが目的ではなく、後始末を強制することが第一のねらいである。(2)家を失った75万人に対し、250億ドルから配分される金額は15億ドルで、一人あたりに支払われる金額は約2千ドルである。しかし、(3)家は保持しているものの住宅ローンの支払が厳しいグループに対しては、月々のローン支払額を減少させるための契約改正が条件になっている。次ぎに、(4)住宅価格の大幅な値下げにより、家の価値を大幅に上回る額の負債を背負っているグループの状況を「アンダーウォーター」と呼ぶが、このようなグループに対しても、最低水準の利息率に修正、又は別の住宅ローンに変更できるなどの措置が含まれている。
和解の利点として、上記(3)と(4)のグループに関しては、今後の住宅ローン契約の修正プロセスにより、ある程度救済の可能性が見えてきた。また、2月10日の『ワシントン・ポスト』紙によると、和解の結果は、個人および投資家の民事訴訟活動を妨げることにはならないようだ。政府側は、5銀行以外の「他の銀行の参加も拡大できる」としているため、更に救済対象が拡大する可能性も見える。一方、マイナス面としては、既に家を失った人達は、自宅を取り戻すことはほぼ不可能であり、わずか2千ドルの支給では救済には程遠い。更に、2月9日の『ロイター』通信によると、和解が効力を発揮するまで最低半年から9ヶ月と、長い時間を要する。更に、銀行側は最長3年間の猶予も与えられていて、3年間待たされる側はその間に必然的に家を失う可能性もある。また、政府関連金融機関と住宅ローン契約を交わしたグループおよびオクラホマ州は対象外である。最後に、全米の「アンダーウォーター」グループによるマイナス資産総額は約7,000億ドルから7500億ドルと推定されているため、これに比較すると5銀行で合計250億ドルの弁償額は銀行側にかなり有利な印象がある。今後、住宅差し押さえ問題に関する訴訟が減少傾向になるのか、また米国政府と銀行間の和解策は本格的な救済措置になり得るかどうかが注目される。
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