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2012-01-06 06:50
「小沢新党」では展望は開けない
杉浦 正章
政治評論家
最近の小沢一郎の政治行動をみると、「解散・総選挙恐怖症」の一語に尽きる。小沢にとっての総選挙は小沢グループの総崩れに他ならないからだ。しかし政局の流れは通常国会中の解散にあり、いくら小沢がもがいても抗し切れないものであろう。大震災以来10か月も放っておいた地元岩手を正月早々回ったのも、早期解散を意識した自分自身の選挙対策に他ならない。それでは、新党を結成して総選挙を乗り切れるかというと、有権者はだれも沈む泥舟を“はやす”ことはあるまい。政局をろう断してきた小沢は、ここに来て袋小路に入ったのが実情だ。小沢の解散・総選挙恐怖症は、まず異常なまでの消費増税反対に象徴される。政局が読める者なら、消費増税法案が必然的に政局の激動を呼び、首相・野田佳彦が解散に踏み切らざるを得なくなる核心であることが分かる。小沢にとって消費増税反対は解散反対に他ならないのだ。何故反対かと言えば、虚飾のマニフェストで獲得した民主党議席が総崩れとなるからだ。とりわけ「風」だけで当選した小沢チルドレンは、目も当てられない惨状と化すだろう。これは小沢の力の論理が総崩れとなることを意味する。
小沢グループが「野党が野田内閣不信任案を提出すれば、これに乗る動きが生ずる」とすごんでいるが、これは「小沢新党」を意味することになる。しかし展望は開けるか。今年70才になる「政局の小沢」が新党を作っても、有権者は「またか」と言うだけで、何の希望も見いださないだろう。どんな政策を打ち出しても、崩壊したマニフェスト作りの“主犯”の言動を信ずる者はいまい。小沢が大阪都構想の大阪市長・橋下徹に接近しているのも、橋下の起こす「風」に便乗しようとしているに過ぎない。他人頼みでしか、新党のエネルギーは出ないと踏んでいる証拠だ。だからといって、「新党→政界再編」の動きが可能かというと、これも極めて難しい。野党は、小沢が不信任に同調すれば歓迎するだろうが、自民党も、公明党も、「悪魔と手を組んで」まで政権を獲得しようとするだろうか。疑問だ。なぜなら、不信任が可決されれば野田は間違いなく総辞職でなくて、解散を選択する。小沢の一番恐れる事態となり得るのだ。選挙後、小沢新党は惨敗して相手にされなくなるだけだ。だから、小沢の最近の行動は「新党」への流れにブレーキをかけるのに懸命なのであろう。
年末に急きょ3つの小沢グループを統合して106人の「新しい政策研究会」を作ったのも、離党者を増やさないよう“たが”をはめるのが主目的だ。それでも先の見えない連中が、解散を恐れる余りに、理念も主義・主張もなく政党交付金だけが目当ての「新党きづな」なるものを作った。人間の権力欲とは恐ろしいもので、「風」で当選したことが分からない議員が、代議士を2年半もやると、「まだやりたい」と、うろたえるのだ。小沢は連動を恐れて、懸命の阻止行動に出たが、力及ばずといったところだ。要するに小沢はグループの数と結束力が低下する連鎖が起きることを警戒しているのだ。
これはとりもなおさず、「民主党あっての小沢」を意味する。民主党があるからこそ“内弁慶”が通用するのだ。民主党が分裂・崩壊しては、小沢の存在感は政界から喪失しかねない。小沢周辺は最近4月の政治資金規正法違反事件の判決に関して「無罪を獲得したら、9月の代表選に立候補する」という情報をしきりに流しているが、これこそ捕らぬ狸の皮算用だ。逆に有罪判決となれば、一切の身動きが取れなくなることを忘れている。希望的観測で政治を引っ張るしかないのが実情なのであろう。こうして「小沢政局」の実態は袋小路にあるが、小沢が106人を確保している現実は無視できない。新党は無理でも、党内でぎりぎりのせめぎ合いをする数は、一応ある。今後、消費税法案作成と提出をめぐって、盲目的な反対の動きを展開するだろう。ここに来て消費増税実現に向けて目の色を変えて突き進み始めた野田とは、激突のコースをたどるだろう。野田は1月5日、野党に対して「政局より大局で」と訴えたが、これはまず最初に小沢に対して言うべき言葉だろう。
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