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2011-11-24 06:55
消費税での政界再編は机上の空論
杉浦 正章
政治評論家
どうも最近大政党の幹事長としては発言に重みがないのが、自民党の石原伸晃だ。環太平洋経済連携協定(TPP)のAPECでの参加表明に反対して首相・野田佳彦の問責決議案上提に言及したかと思うと、180度軌道修正して「日本の農業が壊滅するから参加すべきではない、という議論をしているステージからは動いた」と事実上の参加表明だ。おまけに野田が離党すれば、政界再編だという。自民党の論客というが、話が場当たり的で、支離滅裂だ。では、その政界再編が消費増税を軸にあり得るかというと、まず困難だろう。出て行くとすれば小沢一郎だが、“沈む泥舟”に果たして何人乗るだろうか。石原の政界再編発言は「野田首相らが、民主党を割ってでも消費税を10%にするんだと言い、私たちも割れるかもしれないが、自民党もそうやるんだと言えば、新しい政治体制ができるかもしれない」というものだ。しかし時局認識があさってを向いている。
「野田が民主党を割る」ことはあり得ないのだ。野田は政権サイドで消費税を実行に移そうとしているのであり、割る場合には、これに反対する勢力が割るしかないのだ。その勢力とは、にわかに消費税反対で旗幟鮮明にした、小沢サイドでしかあり得ない。やる場合は「新生党」結成方式の踏襲だ。1993年にすべてを「政局化」して、小沢らが宮沢改造内閣不信任決議案に賛成、自民党を離党して、新生党を結成。非自民7党1会派による38年ぶりの政権交代を実現したのだ。しかし、小沢が20年前の政局方程式にはたきを掛けて持ち出しても、果たして実現へのうねりが台頭するだろうか。筆者はしないとみる。やろうにも出来ないのだ。93年当時の小沢は、まだはつらつとして新鮮味があった。しかし、現在は公判中で刑事被告人の身で、党員資格停止処分中でもある。度重なる政局の中心として満身創痍(そうい)なのだ。この傷だらけの“灰色度”の高い政治家が、「この指とまれ」と言っても、展望のない新党に勢いが出るだろうか。
おまけに新党に政党交付金が払われる要件である「年末までの新党結成」が間に合うわけがない。1人1億円はかかる新党結成費用を捻出できるか。いくら側近の輿石東が幹事長でも、小沢が幹事長時代に「組織対策費」としてジャブジャブ使った政党交付金も使えなくなった。と言うのも、前首相・菅直人がイタチの最後っ屁のように、組織対策費のような不透明な支出は「監査法人のチェックが入り、認めない」ことを決めているからだ。だから小沢は、離党しようにも出来ないのである。それではなぜ政局に直結する消費増税反対を唱えるかというと、発言が語るに落ちている。「追い込まれて最悪の状況で選挙になるのではと心配している。次の選挙で自分1人が戻ってもしかたがない。皆が戻らないと力を発揮できない」というのだ。詰まるところが、消費税選挙では小沢陣営の“壊滅的打撃”が予想されるからである。何も小沢は政界再編が可能とみて発言しているのではあるまい。グループを“落選”の脅しで、早期解散反対へとあおり始めたのだ。
石原のもう一つの誤算は、「私たちも割れるかもしれない」であろう。消費税をめぐって自民党が割れるようなことが起きるとでも言うのであろうか。麻生内閣で改正所得税法の付則104条により消費税導入の路線を敷いたときにも、去年の参院選で10%への増税を公約としたときにも、党分裂の動きが生じたとは寡聞にして聞かない。最近TPPをめぐって執行部批判を強めている石破茂が党を割るだろうか。割らない。石破は「10%増税が嫌だというなら党を出て行くべきだ」と全く逆であり、ポスト谷垣へも意欲を見せている。石破は勉強会を来月1日にも立ち上げるなど、ポスト谷垣をめぐって世代交代への動きも台頭させている。石破の対抗馬は石原で、「石石対決」などとはやされるが、石原のこの体たらくでは、勝負は戦う前からついている。いずれにしても小沢を軸とする古色蒼然たる政界再編論は言うまでもなく困難だ。ましてや野田が離党してまでの再編は、机上の空論でしかあり得ない。折から与野党は解散を軸に対決姿勢が強まる一方だ。政界再編とはほど遠い状態に向かいつつあるのだ。
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