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2011-10-24 06:43
野田内閣「四大懸案」の可能性を検証する
杉浦 正章
政治評論家
「安定した政権でも一内閣一課題というのに、大課題を全部やろうとしている。政権の体力が続くのか」と自民党総裁・谷垣禎一が疑問を投げかけている。確かに復興増税の第3次補正予算案を手始めに、環太平洋経済連携協定(TPP)、普天間基地移設、消費税増税など超ど級の課題を抱えて、いずれも首相・野田佳彦は前向き姿勢を示している。しかし、「やる」と「出来る」は別問題。一つ一つ検証すれば、出来るものと不可能なものが混在していることが分かる。週末10月28日の所信表明演説を皮切りに、本格論戦の火蓋が切られるが、難航必至の船出となろう。まず補正予算案は、ことが災害復旧の「黄門の印籠」となっているだけに、成立しないと言うことはまずあり得ない。焦点は、公債償還期限だ。財源に充てる臨時増税案を何年に振り分けるかだ。当初10年を主張していた民主党は、公明党の主張を入れて、15年で償還の方向に固まったが、自民党がまだごねている。さすがに60年は長すぎるとみたか、政調会長・茂木敏充が23日のNHKで「30年」まで降りたから、15年をさらに少し伸ばせば、自民党のメンツも立つ。このさい与野党は互いのメンツにこだわらず、妥協による早期成立を目指すべきであることは言うまでもない。11月中下旬には成立の運びとなろう。
TPPは、来月12日の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議までに野田が交渉への参加を決断せざるをえない状況であろう。野田は「アジア太平洋地域は間違いなく成長のエンジンとなる。高いレベルでの経済連携は日本にとってプラス」と踏み込んでおり、もはや後に引けまい。問題は党内の反対勢力をいかに押さえ込むかだが、来月上旬には見切り発車をせざるを得ないのが実情だろう。反対派説得に当たって、筆者は先に2段階方式を提唱した。交渉に入って国益を害すると分かれば、そこで脱退する方式だ。これについて政調会長・前原誠司が23日のNHKで「交渉に参加して、国益にそぐわなければ撤退もあり得る」と発言、2段階方式で党内を説得する方向を鮮明にさせた。反対派は、前農林水産相・山田正彦が離党を示唆してすごんでいるが、こちらの方もやりきれるかどうか。小沢一郎は「自由貿易は最も日本がメリットを受ける。原則として理念的にはいいこと」と前向きだ。
消費増税は難航含みだ。ここにきて財務相・安住淳が主要20か国・地域(G20)の会議で、財政再建の具体策として消費増税法案に前向きの言及をした。消費税率を10%に引き上げるための関連法案を来年の通常国会に提出する考えを表明したのである。国際公約にしてしまった形となった。前原も「年内には消費税に関する考え方をまとめて、通常国会に提出する」と明言している。もう消費増税も引くに引けない問題となり、臨時国会段階から前哨戦が始まる。自民党は反発しているが、10%への引き上げは同党の公約である。だいいち、自公政権が09年に成立させた税制改正関連法の付則には、「2011年度までに消費税を含む必要な法制上の措置を講ずる」と明記されており、反対は矛盾する。問題は、谷垣が指摘するように「民主党はマニフェストでは消費税を否定しており、導入するなら国民の信を問うべきである」という主張である。これはまっとうであり、通常国会では消費増税と解散論が一体となって転がるものとみられる。
普天間の辺野古への移設問題は、野田がやはりオバマに早期解決を約束したが、まず99%不可能だ。野田は閣僚3人を派遣して瀬踏みをしているが、知事・仲井間弘多をはじめ沖縄側は箸にも棒にもかからない。移設を強行して、ピケを張った老人に死傷者でも出れば、その時点で政権は“サドン・デス”の宣告を受けたことと同じだ。日米両国政府とも不可能を可能と言いくるめることは、お互いの国民や議会を欺くことにつながる。普天間は確かに日米関係に刺さったとげであるが、日米安保の大道をこれで揺るがせてはなるまい。結局時間をかけて再交渉するしかあるまい。こう見てくると、野田が前向きな四大懸案のうち復興増税は成立の流れ、TPPは前進可能。消費増税の通常国会成立は未知数。1国会では無理かも知れない。普天間は不可能という流れが鮮明となってくる。
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