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2011-10-05 06:53
朝霞宿舎建設凍結の40億の違約金は、野田の“背任罪”だ
杉浦 正章
政治評論家
105億の建設を凍結して、違約金40億円を支払わされたら、民間企業なら株主集団訴訟で社長は確実に背任罪に問われる。地方自治体の首長でも、住民訴訟で個人的に違約金を払わされる可能性がある。首相・野田佳彦が打ち出した朝霞公務員宿舎建設5年間凍結をめぐる問題は、肝心の損得勘定が抜けている。40億円は国民の血税だ。政権ばかりか、マスコミも、野党も、何をトチ狂っているのか。野田にしてみれば、自らのリーダーシップで建設工事を凍結させたという筋書きだろうが、自分が財務相時代に決定した建設計画なのだから、マッチポンプそのものだ。再開必至の八ッ場ダムの建設が、中止でかえって建設費を日日増大させているケースと酷似して、「パフォーマンスの民主党」が野田政権でも復活した。野田が「5年間凍結」ということの意味は、5年後には建設再開を意味するのだろう。そうでなければ「凍結」にはしない。「中止」にする。
財務省役人とのズブズブの関係を象徴している。そこを突かれたくないから、財務相・安住淳が5年後の「中止」に言及するのだろうが、「うそをつくな」と言いたい。そもそも1年後も定かならぬ政権が、5年後を語れるのだろうか。民主党が存在しているのかすら怪しい。マスコミもマスコミだ。「被災地そっちのけで、建設するのか」という感情論にとらわれ過ぎて、現実の損得勘定を無視してきた。のほほんと親方日の丸のサラリーマン稼業を送っている「記者貴族」では見極められまい。全国紙の全ての社説が、朝日「公務員宿舎、官の論理を押し返せ」、読売「状況に応じて従来の政策を柔軟に軌道修正するのは、大切なことだ」、毎日「朝霞宿舎凍結、このぶれは評価したい」と、ノーテンキにも「凍結」に無条件で賛成している。凍結賛成は勝手だが、結果がどうなるかが分かっていない。辛うじて朝日の社説だけが違約金に気付いているが、「違約金を支払え」という論理構成だ。凍結決定前の社説で「政権は億単位の違約金を払ってでも建設を取りやめ、残りのお金を復興費用にあてるべきだとは考えない」と批判している。しかし総建設費の4割の違約金は、業者にとっては笑いが止まらない、濡れ手で粟の臨時収入だ。仕事をしなくても、利益が生ずるのだ。
朝日は「建設凍結、世論の圧力」という勝ち誇ったような見出しの記事の中で「工事凍結による損害賠償は最大40億円との見方もある。せっかくの首相決断も色あせそうだ」と、「違約金払え」の社説とは全く逆に野田の失政に言及している。大矛盾だ。歴代民主党政権の「ぶれ」を恐れて、ひたすら低姿勢で通してきた野田も、ここに来て馬脚を現した形となった。パフォーマンスの事業仕分けで中止となった建設工事を、自分が財務相になってから同省の役人に気を遣って2010年に再開を決定したまではよいが、大震災が発生してさすがにストップ。震災のほとぼりが冷めるのを待つかのように9月1日にこそこそと着工したが、マスコミのやり玉に挙がった。10月3日の工事現場視察とその後の対応は、泥の中から顔を出したドジョウが、マスコミカラスを見て慌てて首を引っ込めた構図だ。視察するまでもないことを3流補佐官らの入れ智恵で、たったの9分間視察してみせる。まるで猿芝居であり、紛れもない民主党型パフォーマンス政治の復活だ。
建設会社が違約金を請求するのは当然だ。請求しなければ、それこそ株主総会ものだ。国も債務不履行(契約不履行)となるのだから、当然支払いの義務が発生してしまう。血税40億円もの損失を計上しないためには、民間企業なら絶対に違約金を支払わない方策を模索する。例えば、建設を継続して完成させた上で、マンション業者に売却するなどの手段だ。知り合いの大手不動産業者によれば「朝霞は立地条件が都心に近くてよい。すぐに売れる」とのことだ。とにかく親方日の丸で「金はかかっても、自分の責任だけを回避すればよい」というものだ。もっともこの時期に40億円の損失は、例え他の公務員宿舎の売却で10億円程度のプラスになっても、国の財政に打撃を与えることは紛れもない。どう言い訳しても野田の責任は免れない。野田は自ら違約金40億円を支払うべきだ。当然行政訴訟が発生してもおかしくない問題だ。
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