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2011-09-21 07:32
“福島いじめ”は、マスコミ起因の風評被害だ
杉浦 正章
政治評論家
こどもがやる「ばい菌付けた。えんがちょ」というばい菌ゲームが“いじめ”となって列島を覆っている。対象は「福島」である。愛知県日新市での福島花火の中止は、京都五山の送り火事件と同様に、原発事故災害にうちひしがれた福島県民の心を根拠もなしに深く傷つけた。経産相を辞任した鉢呂吉雄の言動も、言うならばえんがちょの愚行にほかならない。福島産品を買おうという市民運動もある反面、食卓に福島産の食品を忌避している家庭も多い。日本人はその極端に神経質な性質から、マスコミの過剰報道もあって、一種の放射能ノイローゼに陥っているのではないか。無知・無理解を根源とする狭量な考え方だ。この“迷信”によって日本社会が失うものは大きいと考えるべきであろう。事故発生当初からあった風評被害は、一層深刻化しているとしか思えない。日新市の場合は、9月18日夜あった花火大会で、福島県産の花火に対して市民らから「放射能をまき散らす恐れがある」などの声が寄せられたため、打ち上げを中止したことが19日わかったものだ。花火大会実行委員会によると、17日昼過ぎから電話やメールで市民らから「汚染された花火を使うな」など約20件の抗議や苦情が寄せられたという。実行委は放射能を測定する機器がないなどの理由で「安全性が確認できない」と中止を決め、判断力欠如の市長もこれを認め、愛知県内の業者の花火に替えたという。
その後中止論をはるかに上回る非難の声が市役所に届いている。京都五山のケースと酷似している。京都の場合は送り火に「高田松原」の松を使う予定が、薪から微量な放射性物質が検出されたことで中止になったものだ。一方、福岡では福島産の加工品を扱う応援ショップが出店中止になた。こうした風評被害の根源に何があるかを考えると、やはりマスコミのセンセーショナルな報道に帰着する。厳正中立な公共放送であるべきNHKが、左翼労組から賞賛されるような脱原発報道を繰り返し、朝日や毎日の放射能報道のセンセーショナリズムは並大抵のものではなかった。民放テレビに至っては、報道をもてあそんでいるとしか思えない。その例が東海テレビ放送の「怪しいお米セシウムさん」「汚染されたお米セシウムさん」報道事件だ。テロップ制作担当者が、岩手県産ひとめぼれに対して、遊びで作ったリハーサル用の仮テロップを送出させてしまったのだ。本筋のマスコミですらこの調子では、週刊誌レベルに至ってはまさに書きたい放題だ。ナイーブな読者は本筋のマスコミで脅かされ、さらに週刊誌を見てもっと驚く、という負の連鎖に踊らされているのだ。
大手マスコミも巧妙だ。朝日の場合、散々放射能の恐怖をあおっおいて、京都五山のような事件が発生すれば、その後の論説で戒め、「声」欄で反対論を掲載するというかたちだ。まるでマッチポンプもいいところではないか。筆者は事故発生当初から「チェルノブイリとは違う」と分析し続けてきたが、風評の根源は、政府が安易にも事故をチェルノブイリと同等のレベル7に引き上げたことに起因するものが大きい。世界の専門家の多くがが高すぎるという反応を見せていたにもかかわらず、核爆発であったチェルノブイリと同等化してしまったのである。日本でも「福島が最高のレベル7ならチェルノブイリはその最高を突き抜けたレベル18だ」する専門家の主張もあった。福島は幸いにも1人の死者も出していないが、チェルノブイリの死者は10万人に達するとの報道もある。信頼できる世界保健機関 (WHO)の調査でも、死者は事故処理の従事者と汚染地域および避難住民を対象にした調査で9000人と推計している。チェルノブイリの場合は周辺の樹木はすべて立ち枯れ、生息する動物はゼロになったのだ。
さらに、1945年から約半世紀の間に2379回核実験が行われ、その内大気圏内の実験は502回であり、これがまき散らした放射線量は膨大なものがあった。中国が東トルキスタンで実施した核実験による被害で同地区のウイグル人ら19万人が急死したほか、急性の放射線障害など甚大な影響を受けた被害者は129万人に達したとの報道もあった。東京や大阪でも1000倍のプルトニウムが大気中に放出された時もあり、当時から「野菜は洗って食べよ」「雨に濡れると頭髪が抜ける」などと報じられたが、人類は生き抜いてきた。放射能雨と因果関係のあるハゲは見当たらない。それにつけても政府の“風評無策”ぶりには驚かされる。首相・菅直人は、事故に慌てふためくばかりで、世界に発信して風評を押さえるなどという発想はゼロであった。京都五山の例も今回の花火の例も政府に相談する窓口がないことが問題の核心だ。自治体ばかりでなく、一般市民も、相談可能な専門家による窓口を早急に設置しなければ、マスコミに起因する風評被害はいつまでたってもおさまらない。社会に害毒を流し続ける。
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