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2011-08-24 12:33
日本の近隣諸国の国際法への姿勢
茂田 宏
元在イスラエル大使
中国政府は近く発表する2011年版外交白書「中国外交 2011」に「釣魚島(注:尖閣列島)は中国固有の領土であり、争いのない主権を有している。日本側による中国の漁民と漁船に対する拘束や調査、司法措置は違法で無効であり、謝罪と賠償が必要である」と記述していると報じられている。中国は過去において尖閣諸島が日本領土であることを何度も認めている。中国の尖閣諸島への領有権主張は、いわゆるエストッペル(禁反言:既に言ったことに矛盾する主張は認められないとの法の一般原則)だけでさえ認められないことである。然るに、そういうことは全く無視して尖閣に対する領有権主張を何の恥じらいもなく主張し続けている。
北方領土問題については、1964年、毛沢東が佐々木更三社会党委員長(当時)にソ連は千島を日本に返すべしと述べた後、何度もソ連帝国主義批判のなかでソ連の千島占領はソ連の拡張主義の表れであると主張してきた。然るに昨年のメドヴェージェフ訪中の際には、核心的利益の相互支持は中露戦略的パートナー関係の重要な一部であるとして、これまでの立場を変え、ロシアの北方領土に対する主張を支持する姿勢を明らかにした。中国は前言を尊重しない国であると断じざるを得ない。日中関係を「戦略的互恵」にするとの共同声明での文言や、日中平和友好条約にある「覇権反対条項」を中国が尊重すると考えるのは間違っているだろう。中国は前言や条約の規定をいつでも平気で反故にする、あるいは反故にするに等しい主張をする国である。
戦前、ソ連は南樺太を日本に割譲したポーツマス条約については、1925年には否認はしなかったが、政治的責任を負わないと言明し、その後、戦時中にはモロトフがポーツマス条約を否認する主張を行った。さらに、平和裏の交渉で出来た千島・樺太交換条約で合法的に日本に帰属している千島の返還を主張し続けた。これがヤルタ協定につながり、現在の北方領土問題につながっている。要するに、条約を無視する意図を公言し、恥じない国であった。それで終戦後、ドサクサにまぎれて千島を占領して、今に至っている。ソ連崩壊後、ロシアが成立し、国際法を尊重する国になったかと思ったが、このロシアもスターリン外交の戦果を保持することを対日外交の眼目としている。日本は北方領土について国際法上、日本に属することを主張して来たが、それを馬耳東風と聞き流し、今日に至っている。
こういう国に対しては、サンフランシスコ条約2条C(樺太・千島放棄条項)を度外視する主張を日本としても展開していくことが最も適切である気さえする。韓国は竹島について、日本が国際司法裁判所への提訴を求めても応じず、竹島は日本の朝鮮侵略の第1歩であったとの虚偽の議論を振り回している。韓国はサンフランシスコ講和条約で、日本の領域から外される地域に竹島を入れるように米に要求した。しかし米は調査後、竹島は日本領土であるとした。このような経緯、歴史を全く無視している。北朝鮮の国際法無視については、もう論じる必要もない。日本は、国際的な礼譲や法を尊重しない諸国に囲まれている。そのことを今一度、認識することが必要である。こういう国に対しては、力のバランスをわが方に不利なように変えさせてはならないし、変えさせないことが平和を維持することになる。
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