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2011-06-28 07:25
菅、「挑発人事」で対決ムードを高める
杉浦 正章
政治評論家
西郷隆盛は自宅の雨漏りを嘆く妻に「今、日本中が雨漏りしておっとに、わが家の修繕なぞしておられん」とたしなめたと言うが、やはり日本中が雨漏りしている中で、首相・菅直人はもっぱら「自宅の修繕」に余念がない。当選して以来名前を聞いたこともない“雑魚”を自民党から一本釣りするという禁じ手は、もともとない判断力がいまや分裂状態に陥っていることを物語っている。案の定懐に手を入れられた自民党は激怒し、重要法案成立のメドはますます立たなくなった。菅は記者会見で禁じて中の禁じ手である「脱原発解散」を聞かれて、わざと答えず、「暗黙の脅し」という高等戦術に出たが、もはやすがるのはこれしかないと思っているのかもしれない。菅は野党挑発に出たのだ。主君のそばににいて取り入り、よくないことを考える家臣を君側の奸というが、今回の人事では大奸と小奸の2人がいた。まず小奸は民主党副代表・石井一。菅に27日午前電話して「あなたはどうせもう辞めるのだから、最後に誰を選んで死んでいくのかを決めないといけない。それには亀井静香しかいない」と国民新党代表・亀井との連携をけしかけた。
石井は6月26日夜の幹事長・岡田克也ら政府・与党幹部6人組の会合でも「早ければ7月中、遅くとも8月末の菅退陣」で一致したことから、もう党内には菅延命を支持する幹部はいないと判断、「亀井にすがるしかない」と忠告したものだろう。その大奸・亀井は、政界ではまともに相手にされず、落ち目の菅に取り入るしか、自分の存在価値を示せないため、あらゆる手段を講じて菅に“よいしょ”をし続けている。今回も「復興対策担当相」狙いの大幅改造で6月上旬から動いた。菅には参院自民党を取り崩し、ねじれも解消すると持ちかけ、そのための工作資金を求めたようだ。菅はこれを容認して、亀井の動きを見守った。亀井は元自民党参院議員会長の村上正邦を通じて浜田和幸ら3,4人を口説いたようだが、いくら何でも沈む泥舟に乗ろうという議員は浜田以外には見つからなかった。これを察した菅は、28日になって大幅改造は困難と判断、亀井には石井の忠告を聞き入れて、副総理での入閣を要請した。
しかし亀井は、復興担当相を防災担当相・松本龍に回され、大幅改造も見送られたことで、憤まんやるかたなく、これに応じなかった。なんのことはない、亀井の政権延命の謀略は梅雨の線香花火のように湿って火が付かなかったのだ。しかし、浜田1人を総務政務官にするといういわば“ゴミ人事”だけが目立ってしまった結果となったが、菅があえて断行した背景には、党内、野党両睨みの狙いがある。党内的には、力を“誇示”することによる6人組造反へのけん制であり、野党に対しては、自民党を挑発して一本釣りで怒らせ、対決ムードを高めようとしているとしか思えない。焦点の再生可能エネルギー買い取り法案について、岡田は菅との間で「審議・採決まで行う」で合意したと述べているが、菅は27日の記者会見で「何としても私の内閣の責任で成立させたいと考えている」と述べた。昨日の解説でも指摘したとおりとなった。「採決まで」か、それとも「成立まで」か、の食い違いは大きい。成立しなかった場合には、衆議院を解散する含みがあると受け取れるのだ。そのためには自民党を挑発して同法案をめぐって対決ムードが高まれば高まるほどよいことになる。
問題は、党執行部を全く無視して人事を断行して、今後の党運営が菅の思うとおりに進むかということだ。岡田は、菅に「亀井副総理反対」を伝達した直後に、菅が同人事を亀井に打診したことで、神経を逆なでされた形となった。国会対策委員長・安住淳も「何の話も聞いていない。本当に国会の厳しさを分かってやっているのか」と怒りを隠さない。きょう28日の両院議員総会が見物だ。執行部からは助け船は出そうもない。一方、自民党執行部は激怒しているが、脇の甘さは隠せない。総裁・谷垣禎一に至っては、25日、第2次補正予算案について「考えが違うものは出てこないと思う。ポンポンと審議すればいい。協力する」との早期成立に協力する考えを表明してしまった。そこに菅からの平手打ちを食らったのだから、いかんともしがたい。求心力を問われる結果となった。
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