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2011-05-09 09:40
浜岡原発の運行停止要請をした菅首相を評価する
吉田 重信
政治学専攻
今回の菅首相による浜岡原発の運行停止要請について、以下のとおり評価する。菅首相は、判断力が乏しいと一般にみられていたが、今回意外に勇敢な資質を見せたようである。専門家によれば「今後30年間におけるM6級の東海大地震の発生予測率が84%である」とされた以上は、大災害が明日にでも発生することを意味し、菅首相が危機回避のための迅速な決定をしたことは、妥当であると考える。むしろ遅きに過ぎた感すらある。危機管理能力は、危機が発生したあとではなく、事前に危機を予測して、その可能性を回避してこそ意味がある。これこそが、すでに発生した福島原発災害の教訓である。
事前に十分な検討がなされなかったとの批判が一部にはあるが、この際、菅首相が、慎重さよりも、迅速、果敢さを重視して、適切な決定をしたことは、首相が危機管理能力を十分にもっていることを示したものと高く評価したい。また、経産省の役人たちには事前に相談しなかった気配があるとしても、もともと原発推進論者の多い経産省の役人たちを抑えて、政治を優先した点で、民主党の方針を貫いたものとして評価に値する。
今回の菅首相の決定により、サミット開催を控え、菅首相の国際的な声望は高まり、サミットにおける菅首相の発言を各国首脳は真剣に聞くだろうと予測される。近年サミットにおける日本のプレゼンスは遺憾ながら低迷していたが、今回サミットでは久しぶりに日本首相の出番がやってくるようである。菅首相はせっかくのサミットの場で世界をリードする発言を積極的にしてほしい。
チャーチル元首相の名言を引用するまでもなく、民主主義を選択するのは、悪さの程度の中での選択である。菅首相の選択は最適の選択ではないかも知れないが、ほかに適任者がみつからないかぎりは、当面首相を務めてもらうほか選択がない。それが日本政治の実情である。ましてや、戦前と同じく「挙国一致体制」という美名のもとに、民主主義政党政治システムそのものを喪失する選択よりも、現状を維持する方がずっと安全な選択である。それが大多数の国民の希望でもあろう。
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