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2011-04-20 07:36
復興消費税のネックは、菅自身の存在!
杉浦 正章
政治評論家
信義がなければ物事が進まないことを「大車も軛(くびき)無ければ進まず」と論語が形容している。軛は牛馬の首にかけて車を引く横木だ。民主党政権の最重要課題である復興財源案が、表に出た途端に頓挫してしまった。復興目的消費税に与野党から反対の大合唱である。なぜかと言えば、ひたすらに首相・菅直人がやるのでは嫌なのである。まさに「嫌菅」ここに極まれりだ。この政権が信用されないのは、物事に真っ正面から向き合わないからだろう。官房長官・枝野幸男が、復興債の財源となるべき消費税増税について「民主党が検討している」と、党側へと“前さばき”をした。消費増税の出所は明らかに党側ではなく、政府側だ。首相・菅直人が1月の時点で「消費税に政治生命を賭ける」と断言し、4月18日の国会答弁で「財政再建ができれば本望」と述べ、首相ブレーンの内閣府経済社会総合研究所所長の小野善康が19日に「復興税でまかなうのは当然」と述べているのが、紛れのない状況証拠だ。おまけに消費税3%増で3年の時限的な復興税にしたあと、“衣替え”で恒久化して社会保障財源にする構想は財務省オリジナルだ。
要するに、菅には自分を前面に出してはまずいという“及び腰”があるのだ。無理もない。野党や党内から直ちに反対の火の手が上がった。自民党幹事長・石原伸晃が「国債を償還するための消費税には反対だ。消費税は、社会福祉目的に限定しないと、国民の理解は得られない」、公明党代表・山口那津男も「直ちに消費税を充てるという考え方には、賛同しない」と足並みをそろえて、反対だ。小沢グループも衆院議員・川内博史が「反対」を表明するとともに、「両院議員総会で議論すべきだ」と“政局化”を目指す構えを表明した。小沢直系の中堅議員による一新会も、19日「もはや菅内閣では、国や国民が救えない」として、“倒閣”で一致している。
こうした動きの背景には、菅の狙いが「消費増税での正面突破」にあると見抜かれていることがあるのだろう。増税を認めれば、自民、公明両党を始め、小沢グループも含めて、「菅降ろし」と矛盾するのだ。自公両党は下手をすれば「菅政権のまま大連立に持ち込まれかねない」と警戒しているのだ。自民党は、消費増税という大命題に賛成しておいて、内閣不信任案や問責決議案を提出するわけにも行くまい。小沢グループも、両院議員総会での過半数で菅退陣を求める話しが出ている以上、党内の多数派工作に影響が出て、とてものめる話ではない。消費増税は浮上した途端に、政権の枠組みと首相進退が密接に絡んで、調整どころではない状況に陥ってしまったのだ。要するに、政治の現状は「菅がやることは、全てノー」なのだ。
いずれにしても、被害総額は25兆円に上るのであり、2011年度第2次、第3次補正予算案は合計で20兆~30兆円規模に上ると想定される。消費税は1%で2.5兆円の税収があり、3%3年間で22.5兆円が想定できる。この際消費税導入は不可欠とも見えるのだ。読売新聞も20日付の社説で「復興に増税はやむを得ない」として「広く薄く負担して支援するという復興税の目的を考えれば、消費税を中心に検討することになる」との見通しを述べている。自民党にしてみれば、もともと福祉目的税としての消費税を推進してきているのであり、3年後の“衣替え”で妥協してもおかしくはないのだが、全ては菅がネックになってしまっているのである。「大震災のどさくさに紛れて、やろうとしている」という見方に定着してしまうのだ。「退陣」無くして全ての物事は進まずということなのであろう。
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