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2011-02-15 13:39
「日米対話:スマートパワー時代の日米同盟」に参加して
矢野 義昭
日本安全保障・危機管理学会理事
昨2月14日、グローバル・フォーラムと日本国際フォーラムが米国の戦略国際問題研究所(CSIS)と共催して、東京で「スマートパワー時代の日米同盟」と題する「日米対話」を実施した。私も参加して、発言する機会を得たので、その際の感想を以下に述べさせてもらいたい。
軍事力の役割が多様化し、非伝統的かつ非軍事的な分野(ソフトパワー)の役割が高まっていることは確かである。しかしながら、日本の周辺情勢を顧るならば、本来の軍事的機能(ハードパワー)の整備こそが、日本にとり火急の課題となっていると言わねばならない。会議では、「ソフトパワー」の重要性と同時に、「ハードパワー」の重要性もまた適切に議論されたと思う。その背景には、米中の力の均衡の変化がある。即ち、米国の軍事力は依然としてグローバル・パワーとして突出した存在であるものの、北東アジアに限ってみれば、そこでの地域的な力のバランスは、中国有利に傾きつつあるのが、近年の流れだからである。
米国の抱く戦略的懸念としては、中国の「接近拒否(access denial)」戦略がある。近年、中国はその潜水艦とミサイル戦力を増強、近代化し、近い将来には、第一列島線内への米空母打撃群の接近を拒否し、この海域を聖域化する戦略である。さらには、第2列島線以西内でも、米軍は前方展開地域に容易に接近できず、例えば日本への来援も遅延する事態となることが懸念されている。しかも、中国は、ミサイル、サイバー、特殊部隊、潜水艦などにより、米側の態勢が未完の内に奇襲してくる可能性が高い。
このことは、換言すれば、日本列島は、在日米軍基地も含め、中国のミサイル、特殊部隊、航空機などにより一度は奇襲攻撃を受けること、しかも対応する米軍の来援は遅れることを意味している。少なくともその間、日本本土を、国民も含め、どう防衛し、耐えしのぐかが、今後日本に課せられた最大の安全保障上の課題と言える。今回の「日米対話」は、「スマートパワー」の重要性を提起する「対話」であったが、同時に「ハードパワー」への資源投入の必要性もまた提起されたことを、指摘しておきたい。
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