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2011-02-02 07:33
「イラ菅」封じて「逃げ菅」に徹す:予算委論戦
杉浦 正章
政治評論家
予算委員会の野党質問で国会が本格論戦の火蓋を切った。質疑を聞いて、ひたすら「事態の政局化」を恐れる首相・菅直人の追い込まれた姿が鮮明となった。小沢一郎の国会招致では、打って変わって「逃げの一手」に徹し、解散では、怒気を含んだ声で否定する。「与謝野問題」だけは開き直ったが、総じて受け身の姿を露呈した。産経新聞は自民党の追求を「ゆるい」と表現したが、見方が浅い。自民党の狙いは「冒頭は責任野党」を印象づけながら、じわじわと政権を追い込み、予算関連法案の処理など「急所で一挙に攻撃野党」に変身する高等作戦とみた。
一番目立ったのは、「逃げ菅」の姿勢だ。新年早々「出処進退を」と小沢に議員辞職を迫った威勢の良さはどこえやら。小沢招致問題では、「国会で与野党協議を」と繰り返し、「いつまでにどうするとは言えぬ」と逃げた。逆に小沢の政権への影響については、「一つの山を越えつつある」と「おやっ」と思わせる答弁をした。答弁に矛盾があるのだ。小沢の影響があるから「逃げ菅」なのではないか。事実、小沢の侍従のような参院議員会長・輿石東から、「衆院で3分の2を確保出来なくなる」との脅しが政権に入ったと言われ、それを恐れての「腰砕け」に違いない。確かに数人の造反で、菅は窮地に陥るのだ。小沢の力が裏で作用した上での「逃げ」であり、「二重権力構造になっていない」と言う菅の答弁は、単に“期待値”を述べたにすぎない。毎日新聞によると、折から小沢は側近らと会合し、「2011年度予算関連法案がどうなるか分からず、何があってもおかしくない。(菅首相が)信を問う場面が出てくるかもしれない」とすごんでいる。小沢の読みも、「菅は袋小路に入った」なのであろう。
野党席から一転閣僚席に座った経済財政相・与謝野馨は、風邪を引いたのかマスクをして、肩にはふけが雪のように積もっていた。野党時代に「平成の脱税王」と首相・鳩山由紀夫を追求した凛とした面影はない。閣僚の誰もふけを払うように忠告してやらないところが異様で、閣内に置かれた孤独な立場を物語った。自民党から「議員バッジを外せ」と迫られて、「有権者への責任がある」と答えたが、有権者が比例区で自民党に投じたから、当選したことを忘れている。有権者を裏切ったのは自分の方なのだ。菅は与謝野を「社会保障と税制改革は国民的課題であり、それにふさわしい方に取り組んでもらうのは、最大の大義」とかばったが、自民党の稲田朋美から「政治は信なくば立たず。正しい政策でも正しい人が行わなければ成り立たない」と急所をつかれて、たじたじだった。
総じて7時間の答弁で、菅は「イラ菅」ぶりを抑制していたが、解散問題を聞かれる度に「この段階で解散をして何が生産的なのか」など、なぜかムキになって、しかも大声で否定した。菅のボディランゲージを分析すると、大声を出すのは「怖い」からにすぎない。小沢が「いま選挙やったら民主党は100人くらいしか生き残れない」と予言しているとおり、解散・総選挙の意味するものは、自ら首相の座を明け渡すことを意味するからだ。論戦の幕開けは、さすがに菅政権側も万全の準備をして取りかかっただけに、大きな隙を見せなかったが、問題は持続性だ。予算委には魔物が住んでいるのだ。
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