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2011-01-28 07:42
公明がルビコンを渡った!菅政権窮地
杉浦 正章
政治評論家
通常国会冒頭本会議における最大の注目点は、自民党総裁・谷垣禎一の質問でも、首相・菅直人の答弁でもない。公明党がどう出るかだった。ところが幹事長・井上義久は、質問冒頭から菅の政権担当能力に疑問を呈し、解散・総選挙か、内閣総辞職を迫った。一時は政権に秋波を送っていた同党は、完全にルビコン川を渡って、自民党とともに乾坤一擲の勝負に出た形だ。これにより予算関連法案の成立は一段と困難となり、菅政権の三月危機は免れ得ぬ潮流となってきた。
その激しさは、青筋を立てて質問した谷垣の比ではない。筆者は録画して待っていたが、いきなり井上は「あなたの政権能力に大きな疑問を持たざるを得ない」と切り出し、「国民、有権者に、マニフェストの契約不履行を心から詫び、改めて国民に信を問うべきだ。それができなければ、総理の座を潔く辞するべきだ」と解散か、総辞職を要求したのだ。流行の伊達直人が国民の気持ちを暖かくしたことから、菅の政治姿勢に言及し、「直人さん、あなたの言動は、政治の信頼を損ねるという負の連鎖を拡大し、国民感情とのずれを増幅させるばかりだ」と切りつけた。加えて、井上は「政治とカネ」をめぐる民主党内の抗争に始まって、内政・外交上の問題を羅列し、「あるべき国の姿があなたから示されたことはない」と、まさに全面否定の論陣を張った。最後に「戦う野党として全力で戦う」と締めくくった。
この井上代表質問が意味するものは何かというと、まず統一地方選挙と、渋々ながら対応し始めた解散・総選挙対策がある。菅政権が順調な頃は、代表・山口那津男も「倒閣を目的とはしない」と述べ、むしろ政権に秋波を送っていた。ところが、マニフェスト見直しや尖閣事件への対応、与謝野変節漢人事など内政外交上の“失政”が重ねられるにつれて、支持母体創価学会から「民主党政権に同調したら選挙は戦えない」という声が強まりをみせ始めたのだ。加えて、昨年の通常国会で子ども手当法案などに賛成して、鳩山政権を助けたことへの批判が、創価学会や下部組織に強く、これへの反省もある。さらに低迷を続けてきた、自民党支持率が好転、民主党と逆転するに至り、自民党と組んでも選挙は有利に展開できるとの読みが生じてきた。学会や下部組織は、10年にわたる自公選挙協力になれており、また党首脳の間には、民主党政権の惨状を見て「とても組める相手ではない」(党幹部)という認識が生じた。国対委員長・漆原良夫が「予算に反対する以上、関連法案にも慎重にならざるを得ない」と発言するに至っていた。
こうした中で“とどめを刺した”のが、井上代表質問であったのだ。井上発言の意味するものは、公明党も予算関連法案に反対するという対決路線の鮮明化以外の何物でもない。おりから菅が秋波を投げかけていた社民党も、法案参議院否決の場合の衆院における再可決への協力にネガティブな姿勢を取り始めている。従って、重要法案の参院否決が即菅政権への致命的な打撃となり得る状況が出てきたのだ。子ども手当法案が否決されれば、児童手当が復活して、自公の主張が通ることになる。また赤字国債発行のための特例公債法案が否決されれば、一般会計歳出の4割がまかなえなくなる、という事態に突入しかねない。世論の反発は必至であり、自公の対決姿勢は両刃の剣だ。何らかの打開策を模索する動きも出てこよう。公明党のことだから、世論の反発でぐらつく可能性もある。しかし井上発言は、明らかに現段階では「政局やむなし」と腹をくくった、と見るべきであろう。
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