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2011-01-25 10:01
ささやかれる話し合い解散か、総辞職
杉浦 正章
政治評論家
総花的施政方針演説の注目点が一つだけあったとすれば、首相・菅直人が自民・公明両党を名指しして、政策協議への協力を呼びかけたことだ。異例の提案の背景には、民主党政権側には「来年度予算案修正」しか局面打開の手段がないことを物語っている。しかし、自公両党は、温度差はあるものの基本的にこれを受け入れる態勢にない。永田町でささやかれているのは、予算案と同関連法案成立を前提にした与野党話し合い解散か、内閣総辞職して選挙管理内閣で解散・総選挙の選択である。
自民党大会で「何としても政権を解散に追い込む」と表明した総裁・谷垣禎一の本気度は、額に青筋を立てていたことからみても、間違いない。問題は、自民党の徹底攻勢が現実場面となった場合に、世論がどう動くかだ。「政治とカネの小沢一郎」「変節漢の与謝野馨」と野党にとってマスコミ向けのアピールには事欠かない。与謝野は民主党席から「ヨソの大臣」とやじられるほど四面楚歌であり、必ず窮地に陥る。朝日新聞が社説で予算修正による妥協を主張しているが、妥協できるような環境はできそうもない。マスコミも菅政権の体たらくから言って、自民党の「解散追い込み路線」を“黙認する”ような気がする。
もっとも、黙認しようがしまいが、自民党は「政局」に「突っ込む」構えだ。ここに来て公明党が自公連携維持の姿勢であることが注目される。菅はなんとか公明党を自民党から引きはがしたい考えだったが、演説で自公に協力を求めた背景には、分断が無理と感じたことがあるに違いない。公明党にしてみれば、下部組織が10年にわたって自民党との連携を前提で選挙協力を進めており、統一地方選挙や解散・総選挙をにらんだ場合、連携を解消するわけにはいかないのである。「世論調査ポリティックス」の元祖のような公明党は、自民党の支持率が民主党のそれと逆転した時点で、再び「自公政権」を意識し始めたのだ。
国会召集日から既に袋小路に入った菅政権だが、事態打開のめどなど全く立っていない。3月2日の予算案衆院通過が年内成立のポイントだが、おそらく衆院は遅かれ早かれ数を頼みに通過させるだろう。問題は関連法案だ。参院で否決されても、社民党の賛成を得れば衆院で3分の2の多数で再可決可能だが、赤字国債発行のための特例公債法案、子ども手当法案、法人税減税の税制改正法案など重要法案がひしめいており、子ども手当法案の一つくらいは社民党の協力も得られるだろう。しかし重要法案を次々に衆院で再可決するような異常事態は、それこそ解散・総選挙を覚悟しなければ無理だ。大混乱の中でおそらく打開策として浮かび上がってくるのは、話し合い解散を前提にした予算関連法案修正・成立か、やはり解散を前提にした内閣総辞職・選挙管理内閣組閣というドラスティックな構想であろう。
現段階ではなかなか考えられないが、小沢問題、与謝野問題、マニフェストの矛盾を抱えた予算案などを軸にさんざん野党に痛めつけられて、ぼろぼろになった菅政権を考えると、そこまで追い込まれる可能性は十分ある。もちろん与謝野ばかりか菅に対する問責決議も「予定」に入っていることは間違いない。菅政権が打ち出した予算修正受け入れ方針は、野党が逆手を取るチャンスとなるわけである。予算が修正となれば、やはり菅が打ち出した税と社会保障の一体改革に関する与野党協議へと話が進む可能性もある。その場合は、民主党分裂、小沢を除く自・公・民大連立の可能性すら浮上してくるだろう。政治は激動期に入りつつあるように見える。固定観念にとらわれるべきではあるまい。
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