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2011-01-14 18:18

紛争多発の気配に満ちる今年1年の世界

川上 高司  拓殖大学教授
 「1年の計は元旦にあり」の通りになると、世界の今年1年は悲しいものとなるだろう。元旦にエジプトではキリスト教徒を狙った爆弾テロが起こり、オーストラリアでは未曾有の大洪水に見舞われている。新年早々パキスタンでは政権が崩壊寸前となっている上に、パンジャブ州知事が首都イスラマバードの真ん中で暗殺され、事態は予断を許さない。

 イラクでも相変わらずテロが起こり、アフガニスタンは去年よりも状況が悪くなる可能性のほうが、良くなる可能性より遙かに高い。年末から政治情勢が不穏になっているコート・ジボワールは、年があらたまったからといって安定するわけでもない。スーダンは南北に分裂の危機を迎えているが、資源を巡る争いであるだけに、容易に決着がつきそうもない。カシミール問題では、これまで静観していた中国がインドとの国境線で不満を言い出している。カシミールは核保有3カ国が角突き合わせている微妙な地域であり、この火種はかなり危険といえる。

 紛争の火種は、あちらこちらにあり、消える気配はなさそうである。経済危機でアメリカをはじめとする西欧諸国のパワーが弱まったために、地下にたまっていたひずみが吹き出しているとしたら、この世界情勢の流れは、今年のうちには変わらないだろう。

 アジアはどうなるだろうか。今年は、経済で力をつけてきたインドが、政治の舞台でも影響力を強めそうである。中国がカシミール領土問題でインドに不満を言えば、インドは「カシミール問題でインドに文句を言うなら、チベットや台湾問題で中国の敵にまわる」と切り返して、結局「領土問題はお互い不問にしましょう」と合意して黙らせた。インドと中国という2大国のバランスの上にアジアは乗っている状態だから、周辺諸国にとっては、死活問題である。両者に地域の大国としての振る舞いを期待したい。
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