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2010-11-25 15:10
外交に大国としての自覚と気概を持て
湯下 博之
元駐フィリピン大使
日本は、今年、国内総生産(GDP)の総額で中国に抜かれ、世界第2の経済大国から第3位に後退するという。1968年以来維持してきた世界第2の経済大国という地位(?)を失うのは残念ではあるが、中国に抜かれたと言っても、日本は依然として米国、中国に次ぐ経済大国であり、その自覚を失わないことが大切である。
中国の台頭は21世紀前半の世界の大きな関心事ではあるが、一時言われた「米中2国(G2)体制」は予見できる将来においては考えられず、多極化世界こそが現実の世界の枠組みになりつつあることを、しっかりと踏まえる必要がある。そして、日本は、その多極化する世界において、米中ほど大きくはないとしても、一つの極として存在し応分の役割りを果たすことを、米国や東南アジア諸国をはじめとする多くの国々から強く期待されていることを自覚しなければならない。
事実、日本の持つ経済力や技術力、経済発展の経験やノウハウ、省エネや環境問題についての技術、経験、ノウハウ等は、今まさに世界の多くの国々が必要としているものである。また、アジアが世界の経済をリードする時代が到来しつつあるが、アジアが全体として協調して発展するためには、日米同盟で米国と結ばれ、世界第3の経済大国である日本の果たすべき役割りが極めて大きい。
日本としても、人口の減少もあり、日米同盟を踏まえたアジアとの一体化なしには、今後の発展が望めないことは明らかである。それなのに、現在の日本は極めて内向きになっており、上記のことに目が向いていない。このままでは、日本として道を誤まることになり、諸外国の期待を裏切ることにもなってしまう。日本は、多極世界の中の一極としての自覚と気概を持った外交を行う必要がある。思いつきの外交や出たとこ勝負の対応に終始する外交であってはならない。自信を欠き、責任を回避する外交であってもならない。そのような外交は、国益を害し、他国につけ込まれるだけである。勉強と熟慮を経た、自信と自覚に裏付けられた外交が必要である。
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