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2010-11-09 07:39
「内弁慶の菅」は「頑張りきれる」だろうか
杉浦 正章
政治評論家
近ごろの政治記者はものの見方の訓練ができていない。窮地に陥った感のある首相・菅直人の発言「石にかじりついても頑張りたい」をとらえて「続投に意欲満々」(毎日新聞)と判断したのには驚いた。とてもそんな空気ではなかった。野党の攻勢で防戦一方の菅が「どこまで頑張りきれるか分からないが」と前置きしている、のをとらえていない。ニュースのポイントは前置き部分にあるのが、分かっていないのだ。衆院予算委審議をつぶさに見たが、菅は小沢一郎の国会招致問題、尖閣ビデオ、支持率急落を突かれて、防戦一方だった。さすがに自民党の棚橋泰文から「有言実行といいながら、あなたに存在価値はあるんですか。粗大ゴミじゃないですか」と挑発されると「取り消してほしい」と色をなしたが、総じて追い込まれた感じが濃厚で、覇気もなかった。
そうした中で、「私自身どこまで頑張りきれるかわからないが、物事が進んでいる限り、石にかじりついても頑張りたい」と発言したのだ。「これはだいぶん弱ってきているな」と受け取るべきだろう。背景には支持率の急落がある。あの鳩山由紀夫ですら、20%台に落ち込んだのは政権発足8か月後の4月であった。ところが菅改造内閣が発足した9月当初は「反小沢効果」もあって、「菅続投歓迎72%」(朝日)だったものが、わずか2か月でNHKの調査では支持率31%となった。他社も大同小異だ。もはや20%台突入は時間の問題ではないか。首相としては、鳩山由紀夫ほどの不適格性はないようにみえるが、菅不人気の原因はどこにあるのだろうか。
それは菅の“内弁慶体質”にスポットが当たったからだろう。「イラ菅」で官僚に当たり散らす割りには、尖閣事件後の中国首相・温家宝との会談で、ゼネコン社員の釈放に言及がなく、小沢の国会招致も直接会って説得すべきところを、幹事長・岡田克也に任せっきり。そして「尖閣ビデオを見ていない」という菅。これでは国民の失望感が増幅するのも無理はない。過去の領土問題をめぐる首相の姿勢で顕著な例として、田中角栄を挙げれば、北方領土ではブレジネフと怒鳴り合い、日中復交をめぐる周恩来とのやりとりでは、毛沢東から「けんかは終わったか」と聞かれたほどだ。菅には一国の首相たるものの気概・情熱が見られないのだ。
20%台まで落ちると、鳩山までの首相4人が連続で辞任へと直結している。まさに危険水域入り寸前なのである。加えて読売の調査では、民主党の支持率も36%から28%まで低下しており、「民主離れ」と「菅離れ」が同時に加速している状況を見せている。菅は予算委で「昨年政権交代したわけだから、4年間単位の考えが政治的慣例になってゆくのが望ましい」と、任期満了選挙の必要を強調した。要するに、支持率の現状は、伝家の宝刀・解散権を放棄しても、305議席を死守せざるを得ないことを意味している。だが、官房長官・仙谷由人の国会答弁は依然として「累卵の危うき」にあるし、幹事長・岡田克也も「一兵卒」小沢にてこずって、力量を発揮できていない。ほうはいとして台頭してきた「外交素人論」。とても菅が任期満了まで3年間も持つとは思えない。来年の予算関連法案をめぐる攻防を乗り切れるかどうかの“3月危機”説が、一段と真実味を帯びる今日このごろである。
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