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2010-09-13 07:44
巨大党内野党の誕生で「脱小沢」は至難
杉浦 正章
政治評論家
かねてから思っていたことだが、小沢は民主党代表選挙に負けても、目的を果たすことはできる。その目的とは、首相・菅直人に「脱小沢」を修正させることだ。なぜなら小沢の獲得する議員票が菅と伯仲するということは、小沢支持勢力が巨大な「党内野党」としての誇示されることに他ならないからだ。菅が人事や党運営で無視できるような勢力ではない。結果的に、「脱小沢」の転換を余儀なくされるだろう。マスコミは、朝日新聞などのほかは、「菅優位」を打ち出しており、大勢は決まりつつあるかのように見える。しかし、衆参411人の議員票に関する見方は、菅リードと小沢リードに割れ、筆者が最初に指摘した通り、菅は地方議員と党友・サポーター票で全体的に優位に立ったに過ぎない。そもそもこの議員勢力の誇示が、小沢の狙いであるのだ。
最初から、狙いは「首相」になれなくても「脱小沢」の転換を図り、一定の主導権を確保すればよいというところにあったのだろう。少なくとも小沢支持勢力を誇示できる自信はあったのだろう。411人の半数が小沢支持という実態は、改めて小沢が政党史上珍しいほどの支持勢力を背景にしたことを物語る。それも世論の反小沢の大合唱の中での小沢支持だから、その“団結力”は固い。小沢軍団ともいえる勢力だ。一部に、小沢は敗れれば「退場を決意する」とか、「小沢神話が崩れて隠居する」とかいった見方が流されているが、数を背景にできた小沢が、そのような弱気になることはまずあるまい。むしろ菅の出方によっては、政界再編を視野に入れた「党内野党」に転じて、党内抗争を激化させ、政権揺さぶりに出る事も予想される。
少なくとも代表選直後からその“脅し”が舞台裏で始まる。菅が国会では“ねじれ”で野党の攻勢を受け、党内からは小沢の攻勢を受けるという“挟撃の構図”となれば、ひとたまりもなく行き詰まるだろう。菅支持グループでは、渡部恒三のように「小沢君も鳩山君もポストなんか求める必要はない」と早くもけん制の声があがっている。このうち鳩山由紀夫に関しては、2度と要職に就けるべきでないというのが全国民的な合意といえるが、小沢については渡部の見方は甘い。好むと好まざるとにかかわらず、内閣改造か、党役員人事で、小沢本人か側近の要職起用を迫られることは確実だ。菅は最近側近に「カネと人事は渡さない」と漏らしているといわれる。これは幹事長を小沢に委ねることだけは、何がなんでも避けたいという思いの吐露であろう。
菅自身は、去る9月6日に、小沢処遇について「選挙の指導は非常に的確だ。得意な分野で活躍していただければありがたい」と選挙対策などを担当する要職に起用する方針を明らかにし、その後修正している。しかし、本音は、幹事長以外で総選挙のノウハウを生かしたポストなどに起用できればよいと考えているのだろう。こうみてくると、菅が勝っても、議員数で伯仲の現実が重くのしかかって、菅の政権運営が極めて厳しいものになることは避けられまい。数を背景に、まずは人事で待ったなしの対応を迫られるのだ。菅にしてみれば「脱小沢」色を鮮明にしなければ世論の総スカンを受け、「脱小沢」を「親小沢」か、「従小沢」に転換しなければ、挙党態勢を維持できないというジレンマに陥る。これほど難しい人事は珍しいといえる。
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