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2010-08-30 10:01
日韓接近に対する中国の過剰警戒の意味するもの
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
中国が日本と韓国の接近にかなり神経を尖らせている。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、8月24日の社説で、「菅首相は、日韓併合100年に際して発せられた『菅談話』において韓国に謝罪したが、 菅氏は新しい日韓のパートナーシップによって北朝鮮への対処や台頭する中国への対応を目指すとも述べている」として、日韓の接近に警戒感を示している。同社説はさらに、「これは冷戦時代の中ソ北朝鮮と日米韓の対立構図を中国人民に直ちに想起させた」と批判し、「日韓が良好な関係を築くのは結構なことだが、日韓は二国で中国を封じ込めることはできないと知るべきだ。日本政府は韓国との良好な関係を築こうとして、新たな敵を作るべきではない」と恫喝まがいの議論を展開している。
人民日報系の環球時報の社説の主張ということは、とりもなおさず中国政府の認識に他ならない。北朝鮮による韓国の哨戒艦「天安」撃沈事件への対処を巡って、米韓と中国の関係は悪化しており、社説からは、それに加えて反日感情を共有していたはずの韓国が日本と接近することへの焦燥感が見てとれる。中国がこれほど神経を尖らせているということは、逆にいえば、日米韓の連携が今後の対中戦略にとっても如何に重要か再認識できるということである。日韓の連携強化を、米国の関与を大前提として、さらに強力に推進すべきである。環球時報の社説が言うごとく、確かに日韓二国で中国を封じ込めることは不可能である。さらに、日韓関係は歴史認識問題や領土問題を抱えており、「各個撃破」されやすい脆弱性を抱えている。しかし、これに米国が加われば話は全く変わってくる。
北朝鮮の挑発に対応する名目で、米韓は既に日本海で合同軍事演習を実施し、9月には黄海においても合同軍事演習を行う予定である。これは、いうまでもなく、最近特に高まっている中国海軍の進出圧力に対する牽制である。日本海で行なわれた米韓合同軍事演習には、我が国からも海上自衛官がオブザーバーとして派遣されている。このようなことができたのは、米韓関係が極めて良好だからであり、菅談話に関係なく日韓関係が既に良好だったからである。黄海における合同演習でも同様の措置がとられるべきであるし、そうなるはずである。遺憾なのは、我が国が「集団的自衛権の行使は憲法上認められない」との憲法解釈をとっているため、実際に部隊を派遣して「日米韓」の合同演習とすることができない点である。
民主党政権が韓国重視を打ち出していること自体は、戦略上、正しい方向性であると言える。しかし、それは適切な手段をもってなされなければならない。日韓併合100年に際して首相談話を発して謝罪したり、日韓基本条約で解決済みの補償問題を蒸し返すような動きを見せたり、はたまた永住外国人参政権付与を約束するようなことは、いずれも不適切な行為である。真になすべきことは、日米韓での軍事協力・軍事交流である。これこそが、北東アジアの平和と安定の礎になる。
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