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2010-05-28 07:45
「馬鹿」「無能」ぶりを露呈した鳩山の全国知事会招集
杉浦正章
政治評論家
こんな全国知事会がかってあっただろうか。4割が欠席して「無言の抗議」の意志を示し、終わったあとに罵詈雑言が飛び交う。首相・鳩山由紀夫の招集した知事会は、鳩山の暗愚さの再確認だけが際立ち、完全な失敗に終わった。行政機構の仕組みを理解していないまま、知事会で知事を説得しようというパフォーマンスを思いついた、自業自得そのものの結果だ。首相主宰の全国知事会でこれほど首相が低く、知事が偉く、映った例があっただろうか。少なくとも首相なら、知事の上に立つ威厳があるものだが、威厳は知事の側にあり、首相は終始おどおどした表情だった。首相が会議場に入った際、閣僚は起立したが、大多数の知事は座ったまま迎えたという。知事たちにとって、会議そのものが不愉快な“夾雑物”だったに違いない。
都知事・石原慎太郎などは途中退席して、「具体案もなしに助けてくれと言われても、助けようがない。馬鹿な会合だ」と声を荒げ、神奈川県知事・松沢成文も「無能としか言いようがない」と究極の批判。そもそも知事会で訴えれば受け入れられる、という最初の発想が狂っている。月末の期限切れに向けてぎりぎりまで“仕事”をしているという、国民向けのアリバイ作りそのものだからだ。全国の知事は沖縄の“惨状”を目の当たりにしており、「この混乱を受け入れても、国の安全保障に貢献したい」と思うだろうか。そう思って発言した瞬間に、県民から「サドンデス」の宣告を受けかねない。エキセントリックな大阪府知事・橋下徹くらいしか、受け入れを表明しなかったのもうなずける。
そもそも大阪府知事の発言は、地元の同意を得た上での発言ではなかろう。海兵隊の訓練場を国内に分散するという構想は、鳩山の思っているように情緒的・感情的なものではない。知事にとってみれば、切れば血が出る話しだ。県民の事前承諾もなしに、請け負わされるわけには絶対にいかないのである。千葉県知事・森田健作の「普天間に火が付いており、全国に火の粉を分散する形になるのではないか」という指摘が、一番知事らの心情を表現している。また松沢が「安保の戦略・理念で方針を示すことが先決」と強調したのも、思いつきで大火事の延焼を巻き起こされてはたまらない、という思いが込められている。
しかし、松沢の言う鳩山の「無能」な答弁は、石原が「尖閣諸島をめぐり日中間で衝突が起こった際、日米安全保障条約が発動されるかどうか」と問いかけたのに対し、「米国に確かめる必要がある」と答えたことに象徴される。歴代政府は、このクリティカルな問題に関しては、「安保が適用される」と答弁し続けて来た。確かめるまでもない基本認識だ。鳩山の「抑止力の勉強」がいかに浅いものかが露呈された。かくして全国知事会は、鳩山の思惑と意図に反して、完全な失敗に終わり、各県知事は鳩山の予想通りの“人となり”を土産話にすることだろう。米国務次官補・キャンベルが自民党議員らに「次の首相は誰と思うか」と聞いたというが、もう先を読まれているのだ。
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