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2010-03-31 07:33
国民票を捨てて、郵政票を選んだ民主党
杉浦 正章
政治評論家
首相・鳩山由紀夫が郵政改革相・亀井静香の郵貯上限2000万円案を丸のみしたことは、とりもなおさず幹事長・小沢一郎の選挙最優先路線が勝利したことを意味する。鳩山は、自らの決定を「即断即決」と胸を張るが、その実は小沢の手の上で踊っている、という構図でしかない。またせっかく構築しかかった国家戦略相・仙谷由人、財務相・菅直人との“旧民主党連合”を見捨てたことも意味する。全く表に出るのを控えて、亀井に代理戦争をさせた小沢の勝利だ。しかし郵政票を獲得できても、国民票が離れては参院選もおぼつかない。
要するに、戦いの構図は郵政縮小をかねてから主張してきた旧民主党グループ「菅・仙石」対、選挙のためなら理念もへったくれもない「小沢・亀井」グループの確執だったのだ。菅・仙石にしてみれば、かって郵貯限度額500万を主張してきただけに、譲れないところであった。一方小沢にしてみれば、政治とカネをめぐる逆風の中で、小沢の参院選戦術である複数区に2人擁立構想は、共倒れの危機に瀕している。1人区は「自民との血みどろの戦いで苦しい」と自ら認めている。こうした中で、筆者が先に指摘したとおり、郵政30万票に加えて、組合員数28万人の郵政グループ労働組合の支持は、まさに垂涎の的であった。地方郵便局長の選挙好きは有名であり、これに限度額引き上げが主張の労組票を上乗せしようという選挙戦術だ。
折から閣内は、民放テレビを舞台に菅と亀井が大げんかをするという醜態をみせ、まさに学級崩壊の様相を示し始めた。当初は「了承していない」と述べていた鳩山が、「了承」に180度転じたのは毎度のことだが、ようやく3月31日の党首討論に思いが及んだのだろう。いくら自民党総裁・谷垣禎一が論争の才に欠けていても、郵政を突けば、鳩山はぐうの音も出ないだろう。まさに閣僚懇前に鳩山は、はやる仙石と菅を拝み倒しての調整をしたのだろうし、しなければならなかったのだ。農水相・赤松広隆にも適当なタイミングで総理一任を発言するように側近が根回ししたに違いない。カメラの前で一同そろって薄気味の悪い笑いを演じたことまで含めて、出来レースの閣僚懇であったのだ。
こうして鳩山は、またしても小沢サイドについた結果となるが、郵政優遇路線は、党是のはずの「官から民へ」の高速道路をまさに「民から官へ」と逆走する姿に他ならない。“国営郵政”最優先で、民業圧迫の構図が出来上がった。問題は小沢の選挙第一主義と、なりふり構わぬ利益団体活用の動きが国民世論の納得を得られるかどうかだ。筆者は、小沢は選挙戦術があって、戦略がないと思う。選挙技術的な小細工のあまり、大局を見ていないと思う。政治とカネの問題に加えて究極の公約違反を繰り返し、民間金融機関がつぶれれば、公費を使わざるを得ない路線の選択。これでは大岡裁きではないが、御政道が成り立たぬのではないか。答えは参院選の結果になって現れるだけだ。
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