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2010-03-17 07:38
「邦夫新党」総スカンで早くも手詰まり
杉浦 正章
政治評論家
「抜くな」といった竹光を抜くから、こういうことになる。鳩山邦夫の「新党構想」は、まるで下手な花見の座興のように、ヤジが飛んで総スカンである。勝手に名前を使われた坂本竜馬が、草葉の陰で「歴史を全く知らない」と怒っている。「結びつける」と言われた与謝野馨も、舛添要一も、腰が引けて迷惑顔だ。本人が「5人のめどが立った」という新党参加者も、まだ1人も参加を表明していない。まるで「ひとり新党」になりかねない状況だ。マスコミのセンセーショナリズムも問題だ。“オオカミ少年”の10回目の発言をまともに捉えた新聞と、「売名」臭いと受け取った新聞との間で、政治記者の判断力の差が歴然と出た。
16日の全国紙朝刊を最初に見たとき、これが1面トップに値するだろうかと疑問に思った。邦夫は新自由クラブで当選して以来、政党や院内会派を渡り歩き、自民党、改革の会、自由改革連合、新進党、民主党、自民党などと所属を変え、今回の離党は無所属だが、それを加えると、ちょうど10回目に当たる。優秀な編集者なら、「またか」と反応する。離党したことはあっても、新党は作ったことのないお方の行動だ。読売も毎日もでかでかと1面トップ。これに対して朝日、産経は記事を一面左に置いた。まだ毎日は3面で「新党結成、展望見えず」と解説しているから救われるが、読売は逆に3面で「邦夫新党第3極狙う」とはやし立てている。3極を狙う力などあるわけがない。朝日は世論調査がトップだが、編集者はトップをどちらにするか迷ったに違いない。その後の展開を見ると、朝日が正解であった。朝日は3月17日付朝刊で「鳩山邦氏ひとり旅」と見出しを取って4面で解説している。背後の冷徹な政治判断がうかがわれる編集方針であった。「売名」と受け取ったのかも知れない。
その「新党ひとり旅」だが、邦夫は理念も政策も志もない。戦略などはさらさらない。さらに重要な点は、肝心の与謝野と枡添に事前の根回しもない。まるでNHKの大河ドラマ「竜馬伝」を見て興奮して先走ったような印象で軽い。その証拠に与謝野は、「話は聞く」と反応するのが精一杯のリップサービスだった。与謝野本人は言えなくても、側近が代弁している。後藤田正純は「連携など全くない。我々と考え方も、大義も、違う」と切って捨てている。枡添も「予算委員会の筆頭理事を務めているので、今は専念すべき時期だ」と電話で体よく断った。枡添と親しい菅義偉も「考え方が全く違う」と否定している。平沼赳夫との連携だけが残るが、平沼もこう評版が悪くては怖じ気づくだろう。
政府・与党からは、嘲笑とも、あざけりとも、とれる反応ばかりだ。一番傑作なのは国交相・前原誠司の「私は坂本龍馬が大好きなので、極めて不快感を持っている。自民党の古い方々を薩長同盟になぞらえて『一緒にする』と言われても、『はあ?』という感じですね」だろう。「10年早い」でなく「10年遅い」と言った国家戦略担当相・仙谷由人もユーモアがある。それにしても、鳩山兄弟の迷走ぶりはどうだ。兄ばかりでなく、「弟よ、お前もか」と言いたくなる。おんば日傘で金の心配が一切なく育つと、こうした人物になるということだろうか。「兄弟共に平成の脱税王」(参院自民党幹事長・谷川秀善)と呼ばれるようでは、国民から尊敬された祖父・鳩山一郎が泣く。「売り家と唐様で書く3代目」である。もっとも自民党執行部は、邦夫をバカにしていると、逆に火の粉をかぶる。中堅若手議員らの谷垣執行部に対する憤まんは、相当なものがあることは事実だ。ここは不満を吸収し、追い詰めた鳩山政権にとどめを刺す段階であろう。朝日の社説は17日「そんなことしている場合か」と見出しを取って、党内のごたごたを批判している。
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