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2010-02-16 07:36
消費税増税へ与野党は「大局」を見据えよ
杉浦 正章
政治評論家
政治とカネもさることながら、首相・鳩山由紀夫の国家財政に対する危機感のなさは、度し難い。国債発行で史上最大の水膨れ予算を作っておきながら、まだ消費税を「4年間上げない」と宣言している。いまや国家の借金は973兆円に達し、国債価格がコントロールを失いかねない「発散元年」(前財務相・与謝野馨)という状況だ。まさに国難の事態に直面しているのだ。4年間恒久財源なしで、国債が暴落すれば、誰が責任を取るのか。国民に信を問うのが前提なら、任期満了など待たずに、早期に総選挙に踏み切ってでも、消費税導入を図るべきだ。そのためには与野党とも選挙目当ての空論を避け、導入に向けて胸襟を開いて協議する場を設けるべきだ。
財務相・菅直人が、財務省の“教育”を受けて、ようやく3月から消費税論議を開始する方針を明らかにしたが、本気で導入に踏み切る姿勢とはほど遠い。財政再建に向けた中期財政フレームを6月に作り上げるに当たって、消費税論議を避けて通れないから、「論議」をするにすぎない。そのうちに幹事長・小沢一郎あたりから、「参院選を控えて適当でない」とのクレームが付くことも予想される。菅は先週鳩山との会談で了承を得た上での発表のようだが、鳩山は「4年間導入しない」方針に凝り固まっており、あくまで徹底した無駄の削減努力をした上での導入検討路線だ。しかし鳴り物入りの事業仕分けが見出した財源はたったの6000億円。民主党の公約7兆円にはほど遠い。それどころか、44兆もの国債を発行して92兆もの赤字垂れ流し予算を作った。4月からの事業仕分けも、大きな新財源を確保することはまず困難だろう。このままでいけば、子ども手当などのばらまき政策で、国の歳出総額が2013年度には100兆円を超え、そのうち国債が60兆円に達してしまう危険性を内包している。
個人の金融資産は1065兆円であり、国内で国債をまかなえなくなる日も遠くない。そうなれば与謝野の「数字的には、国債の発行残高は発散過程に入った。コントロールが利かなくなる第一歩で、民主党はそれに対する危機感を持ってない」という警告が一段と重みを増してくることになる。任期いっぱいで総選挙を断行して、国民の信を問い、その上で消費税を導入しても、手遅れとなる危険性がひしひしと迫ってきているのである。鳩山の主張に添えば、早くて2004年か5年の導入となるが、この空白の5年間が慚愧(ざんき)の5年間となることは、目に見えている。とても5年間は国債乱発で財政を持たせることは出来まい。鳩山がことあるごとに口にする「無駄の削減をしてから」などという悠長な対応をしていられないのが、現実となりつつあるのだ。「無駄の削減」論や「4年間上げない」論は、いまや当面を一時的にしのぐだけの方便となっており、空しく響くだけだ。
財政破たんを避けるためには、現在の状況を国難と位置づけ、政党は、責任の押し付け合いや党利党略の選挙対策にだけうつつを抜かすべきではない。党派を超えた対応が求められているのだ。その点自民党総裁・谷垣禎一が、2月1日の衆院本会議代表質問で消費税増税などを議論する「社会保障円卓会議」の設置を鳩山に呼びかけたが、鳩山が拒否反応なのはどうしたことか。「政治とカネ」の問題といい、危機的財政状況に対する危機感の欠如といい、鳩山の首相としての資質の問題が根底にあるのは、いかんともしがたい。民主党が党利党略を離れて、本当に国家財政を考えるなら、早期消費税導入に向けて与野党協議を開始すべきだ。その上に立って、任期満了選挙などに拘泥せず、与野党話し合いで早期に解散・総選挙を断行し、国民の信を問うべきだ。政治の大局を見据えた対応が今ほど必要なときはない。危機に瀕した国家財政を前にして政局を優先させてはならない。
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